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若者のすべて なんだか、未来が楽しみになる。今を生きる20代の若者たちと、他愛のないおしゃべりを。

第13回:松田健悟(読谷山焼北窯・松田米司工房)

「やちむん」は、沖縄の方言で焼き物のことを意味する。
読谷山焼北窯の松田米司工房で働く松田健悟さんは、
実の父でもある親方の工房で働いて今年で11年目。
目指すのは、使いたくなるやちむんをつくること。

写真:Maya Matsuura 文:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

松田健悟さん

松田健悟(まつだ・けんご)

1991年沖縄県生まれ。高校卒業後、読谷山焼北窯・松田米司工房で仕事をはじめる。工房での作陶と合わせて個人作品の制作も行い、不定期で企画展などに参加。父の米司さんと自宅に「tou cafe and gallery」をオープンした。
Instagram:@kengomatsuda0425

>読谷山焼北窯
読谷山焼の工房で修行をした松田米司さん、松田共司さん、宮城正享さん、與那原正守さんが独立し、1992年に沖縄県読谷村座喜味に開窯した共同窯。13連房の登り窯は沖縄県内最大級。


父である松田米司さんの工房でキャリアをスタートして、今年で11年になるそうですね。

はい。高校卒業後に仕事をはじめて、気が付いたら11年経っていた、という感じです。

小さな頃から、お父さんの仕事を日常的に近くで見ていたんですか?

工房と自宅は少し離れていて子どもの足では行けない距離なので、日常的にという感じではなかったですね。いとこ(米司さんの双子の弟、共司さんのお子さん)が工房で遊んでいると自分もそこに加わるとか、そういう感じでした。
読谷山焼北窯・松田米司工房

工房で働こうと思ったきっかけは何ですか?

なんとなく、という感じでした。当時、高校卒業後の進路に迷っていて……やりたいことがはっきりしていなかったし、“大学卒業後の自分”の姿も明確にイメージできませんでした。それもあって現役で大学に入ることがマストではないのかなと思い、「やりたいことが見つかるまで、手伝うよ」という感じで、仕事をはじめたんです。

そうだったのですね。お父さんは、健悟さんが工房で働くことになった時どんな反応でしたか?

もともと、「やらないんだったらそれはそれでいいけど、一緒にできたら嬉しいな」という風に言ってくれていたんですね。だから嬉しそうではありましたけど、まさかずっといるとは思っていなかったんじゃないかな(笑)。

ちなみに、お父さんのことはなんと呼んでいますか?

工房内では「親方」と呼んでいます。
松田米司さん

はじめた当初は、親方から直接的な指導を受けたのでしょうか。

轆轤ろくろ技術や絵付けなどに関しては、僕に限らず弟子全員が直接親方に指導を受けます。その他の工程、たとえば化粧掛けなどは、弟子間で教え合うのが基本です。

焼き物が完成するまでの間に様々な工程がありますが、健悟さんはどの工程が一番面白いと感じますか?

轆轤ですかね。ずっとチャレンジを続けているというか……未だにできないことが多いですから。

11年続けても。

はい。「前にできなかったことができた!」という瞬間が今でも時々あるんですよ。これから先も、まだまだあるんだと思います。
松田健悟さん
やちむん

0から生み出すのではなく、1を発展させていく

さきほど、仕事をはじめた動機は“なんとなく”とおっしゃっていましたが、実際にはじめてみてどうでしたか?

基本的に地味な作業の繰り返しなのですが、もともとものづくりが好きだし苦ではありませんでした。工房の仲間は同じ目標に向かって仕事をしているんですけど、一人ひとりがつくるものを眺めてみると、それぞれ個性を感じられるのが面白いなぁと思います。

沖縄の焼き物は、日本各地にある他の窯元でつくられるものと比べるとつくり手の色を強く感じるというか、個性豊かな印象があります。唐草に代表される伝統的な絵付けがそう思わせるのかな? と思ったりするのですが。

絵付けもですし、基本的に自由なんです。職人それぞれのスタイルが尊重されるけれど、最終的には沖縄でつくられている焼き物だからどれも「やちむん」だよね、っていう懐の深さがあるというか……。
やちむん
やちむんの窯

ちなみに、健悟さんはどのようなスタイルで仕事をされていますか?

僕、ゼロから何かを生み出すことが苦手なんですよ。どちらかというと既にあるものをアレンジするほうが得意で、その方が性に合ってる。……飯碗だったり平皿だったり急須だったり、うつわ周りのものには色々なかたちがありますけど、この先、これ以上画期的なかたちは生まれないんじゃないかと思うんです。

ああ、それは確かにそうかもしれませんね。

だったら既にあるかたちをより使いやすくなるように工夫したり、自分が好きなかたちを突き詰めていけたら、って。

沖縄の焼き物、やちむんは「民藝」というキーワードで語られることも多いと思うのですが、人々の暮らしの中で必要とされる日用品を名もなき職人たちがつくったことにルーツがあるそうですね。その時代によって必要とされるものは変わっていくと思うのですが、そういった時代性は意識されますか?

北窯には4つの窯の焼き物を販売する共同販売所があるのですが、売り場への商品の出し入れや在庫管理は自分たちでやっています。つくる以上は売れないといけないですから、「寒い時期は湯飲みが動くね」とか「最近は中皿の動きが良いね」とかデータをとって、つくるものを決めています。でもその一方で、時代にはそこまで必要とされていないけれど、「技術的にはできた方がいいこと」というものもあって……。個人的に、売れる・売れないに関係なく「大きいものをつくれるようになりたい」という思いがあるので、そういうものにチャレンジしたりしています。大きいものができると、小さいものが上手になるので。
やちむんの窯

受け継いだ技術で、今を乗り越える

松田米司さん、松田共司さん、宮城正享さん、與那原正守さん、4人の親方が共同窯を開いてから来年で30年経つそうですが、北窯として目指すものは変わっていませんか。

「沖縄の焼き物をしましょう」、「登り窯をたきましょう」、「弟子を育成しましょう」。この3つの柱はこの30年間共通認識として変わっていません。その柱を守りつつ北窯としての焼き物をつくり、親方たちはそれぞれ個人工房としてのものづくりもしています。

特殊なかたちですよね。

はい。よく「奇跡だ」って言われます。
松田健悟さん

先ほどやちむんは自由である、ということをおっしゃっていましたが、健悟さんのものづくりは歴史・伝統というキーワードに非常に近い環境で行われていると思います。唐突な質問ですが、「伝統」というものについてどう考えていますか? 

ずっと同じことを続けることではなく、その時代に合ったものや必要とされるものを受け継いだ技術でつくる、というのが伝統だと思います。

守ることが伝統ではない、と。

そうですね。昔から受け継がれている情報や技術を使って「今」を乗り越えようとすると新しい何かが生まれて……それをまた、次の世代へ受け継ぐ。その繰り返しなんじゃないかと思います。

では、「民藝」というキーワードについてはどう考えてらっしゃいますか?

めっちゃくちゃ深く考えた時期と、考えすぎて良くわからなくなって手放す時期がありました。色々と関連書籍などを読んできましたが、学者とつくり手で民藝への目線は違うなと感じています。親方もこれまで「あなたは民藝ですね」とか「あなたは作家ですね」とか色々な評価をされてきたようなのですが、どちらにも「はい」と答えてきたからおまえもそうしたらいいんだよ、と言ってくれました。好きなようにものづくりをしていれば、「それが何であるか」というジャンル分けは向こうがしてくれる。その分け方は時代によって変わっていくものだからそこに振り回されず、ブレずにものづくりをしていれば大丈夫だよと。

なるほど。

「民藝ってどう思いますか?」と聞かれた時は、「その土地の生活から生まれる道具が民藝だと思います」と答えることが多いですね。使うことで生活が豊かになるもの、それが民藝なのかなって。
読谷山焼北窯・松田米司工房の器

ここ数年、特にコロナ禍以降は私たちの生活様式や、ものへの考え方が大きく変化している気がします。今後どういうものをつくっていきたいと考えていますか?

この数年で、自分は何が好きで何をつくりたいのか? ということについて考える時間が増えました。この仕事をしていて一番嬉しいのは、自分がつくったものが誰かに使われている様子を見る時。だから、「使いやすいもの」をつくっていきたいと思いますね。ちょっとフワッとした言い方ですけど……そこを大切にしたいです。

普段、工房には何時から何時までいらっしゃるんですか。

定時は朝の8時半から夜の6時で、その間に休憩が2時間くらいあります。定時以降も残って轆轤の練習する人もいるし、帰る人は帰るし。それこそ独身の時は、毎日遅くまで残って轆轤の練習をしていました。

2年前にご結婚されたそうですね。

はい。去年の夏に娘も生まれました。
読谷山焼北窯・松田米司工房
読谷山焼北窯・松田米司工房

結婚することで生活リズムがガラッと変わることはそんなに無い気がしますけど、子どもができるとかなり変わりますよね。

自分の場合は、結婚した時点でかなり変わりましたね(笑)。あまり遅くまで仕事をしなくなりました。ものづくりが楽しくて、工房に入ってから8年半くらい夜遅くまでずっと工房にいる生活をしてきたんですけど、結婚する少し前くらいから、それまで夜遅くまでやらないとできなかった量が日中だけでできるようになったんです。

仕事の効率が上がったんですね。

結婚と子どもができたタイミングが、自分にとってはとても良かったと思います。もし今でも「遅くまでやらないと終わらない!」という感じだったら家族にも迷惑をかけるし、やりたいけどできないという状態が心身共に一番キツいと思うので……必死で知恵熱出しながらやってきたのが、ようやく報われたなぁって(笑)。

20代前半でそういう時間の使い方ができたから、自分らしいものづくりのスタイルを発見できたのかもしれませんね。

そうかもしれません。
松田健悟さん

こうしてお話を伺っていると、20代とは思えない安定感や穏やかさを感じるのですが、現時点で何か課題に感じていることはありますか?

個人の作品づくりに割く時間が少ないことですね。今は米司工房における工場長というポジションなのですが、もう少ししたら次の人にバトンタッチして工房のことを任せて……自分は親方と一緒に窯の将来について考えたり、個人の作品に集中できる時間が増えたら理想的だなと思います。

まずは自分を愛する

健悟さんが一人の人間として大事にしていることは何ですか?

誰かの発言や行動を理解しようとする時、自分の経験をものさしにしないようにしています。ずっとそうありたいと思っていたのですが、ようやく最近できるようになりました。

なるほど。それってなかなか難しいことかもしれませんね。

僕もある時から教える立場になったのですが、「なんで同じ意識でやってくれないんだろう?」とか、「同じ情熱でやってくれていると思っていたけど、何かずれてる」とか……どうしても思いがちなんですよね。でも、何か理解できない言動などがあった時も、「忙しかったのかな?」とか「この人は、ここまででいい人なんだ」とか少し距離を置いて見てみると、気持ちが楽になることがわかりました。決して冷たく突き放すのではなく、寄り添う感じで。あれはそうじゃないとか、認めないとかではなく「私はここをやるから、あなたはここをお願いね」みたいな感じで、自分を認めて相手も認めて。
松田健悟さん

ご両親含めご家族の皆さんはクリスチャンだと伺いました。聖書にそういった教えがあるのでしょうか?

「自分を愛するように愛しなさい」という教えがあります。自己肯定感をある程度持っておけば、相手が何をしようが優しく寄り添うことが出来るんじゃないかと思うんですよね。逆に自分に余裕がないと、相手には寄り添えない。かつて仕事をする中で、それが顕著に表れて辛いことがありました(笑)。

自分を知り愛することって、決して簡単なことではないかもしれませんが、大切なことですね。

人間関係に限らず、ものづくりをする上でも自分が整っていることは大切だと感じています。面白いもので、つくるものにその時の自分自身が投影されるんですよね。窯入れしてから約2か月後に出来上がってくるんですけど、当時の自分が目の前に現れる感じで。たまに「うわー」って思います。「考えすぎ!」とか「落ち着きがない!」とか、自分がつくったものに言われるんですよ(笑)。

ものを通して自分と対峙する……。健悟さんの仕事ならではですね。

自分自身が現れるということでいうと……。まだ経験が浅い頃につくったものを記念に幾つか自宅に保管してあるのですが、今見ても凄くのびのびしていていいなぁと思うんです。重さや精巧さの観点でいうと今つくっているものの方がレベルは高いのですが、どこか心に迫ってくるものがある。僕の理想はまさにそういうもので、上手下手関係なく「使いたいな」と思わせるようなものをつくれたらいいなと思います。

大分県の小鹿田焼の坂本創さんと二人展をやられたりしていますけど、健悟さん個人としてもさまざまな仕掛けを考えてらっしゃるのでしょうか。

そうですね。いくつかお声がけをいただいているので、それに向けてコツコツつくりだめをしています。あとは……北窯の共同販売所とは別に、実家に「tou cafe and gallery」というカフェギャラリーをつくったんです。そこには親方と僕が個人として自由につくった作品を置いています。
松田健悟さんと松田米司さん

まもなく30歳になるそうですが、さらにその先、10年後の自分って想像しますか?

うーん、明日のこともわからないから(笑)。10年後……どこかでものはつくっていたいですね。今いるところと場所は変わっていたとしても、焼き物をベースにして家族で楽しく生活できていたらいいなと思うので、一応そこを目指して頑張るつもりでいます。でも何が起こるかわからないので、臨機応変に。

臨機応変、いいですね。

自分がいる環境に感謝しつつ、やれることを精いっぱいやろう、と。でも、ずっと気を張り詰めていたらしんどくなるから……挫折しそうになったら「自分はどうしたかったんだっけ?」というところに立ち返って。その繰り返しなのかもしれませんね。
読谷山焼北窯・松田米司工房

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2021/03/24

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