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ホンマタカシ 東京と私 TOKYO AND ME (intimate)

Vol.15 仲野太賀(俳優)
PLACE/阿佐ヶ谷(杉並区)

写真:ホンマタカシ 文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

仲野太賀さん
仲野太賀さん
すべり台
仲野太賀さん
阿佐ヶ谷の風景
阿佐ヶ谷の風景
阿佐ヶ谷の風景
阿佐ヶ谷の風景
阿佐ヶ谷の風景

Sounds of Tokyo 15.(Asagaya Shinmyougu Shrine in spring )


杉並区の阿佐ヶ谷で生まれ育ちました。都心からも近くてなんでも揃っていて、僕にとってとても居心地がいい街です。

JR阿佐ヶ谷駅の南側には阿佐ヶ谷パールセンター商店街や南阿佐ヶ谷駅、北側にはスターロード商店街や旧中杉通りという商店街があります。個人商店が軒を連ねていて活気があるスターロード商店街は特に思い出深い場所で、今でも好きですね。

親の事務所がスターロードの中にあったので、子どもの頃は度々そこにいた記憶があります。共働きだったので、学校が終わったらまずは事務所に寄って、母親の仕事が終わるまで公園や駄菓子屋で遊んでいました。「阿ずま屋」という鰻屋をやっている友達の家や、木村くんという同級生の家でお世話になることもありましたね。

阿佐ヶ谷パールセンター商店街では夏になると大きな七夕まつりがあって、その時に展示をする張り子の飾りを小学校でつくったりしていました。10月には「阿佐ヶ谷ジャズストリート」というジャズミュージックのお祭りもあって、「阿佐ヶ谷神明宮」の能楽堂など街の至るところでジャズが演奏されるのを聴きに行ったりして……。
そんな“生活の匂い”が残る中に中央線カルチャーを感じさせるアンダーグラウンドなテイストのお店があって、最近ではおしゃれな花屋さんや古着屋、ギャラリー、古本屋などもできて、さらにおもしろくなってきました。お、まだまだこの街いけるなぁと思っています。

小さな頃は意識していませんでしたが、24歳で実家を出てからは、改めて「阿佐ヶ谷って楽しい街だな」と思うようになりました。
品のある人、ゴリゴリのパンクロッカー、俳優や芸人、阿佐ヶ谷にはいろんな人がいました。それを思うと、今住んでいる街には子どもの頃に阿佐ヶ谷でよく見ていたような個性的な人たちがいないなぁと感じます。

思えば、年齢を重ねるにつれて阿佐ヶ谷との関わり方も変わっていった気がします。
小学生の頃は自転車を駆使して阿佐ヶ谷を起点にいろんなところに行くのが好きで、どこまで行けるか、なんなら道に迷うことを前提に冒険気分で出かけるのが楽しかった記憶があります。自分のテリトリーを少しずつ開拓していく感じが、ものすごくわくわくしたんですよね。

小学生の後半から中学生にかけては、阿佐ヶ谷から少し足を延ばすことも増えました。
小5の時にはじめて一人で映画を観に行ったのは吉祥寺で、中学生になると古着に目覚めて高円寺に入り浸ったり……。そうそう、人生初デートは吉祥寺でした(笑)。自分の街から一番近い「都会」という感じだったんですよね。

大人になって自転車ではなく自分の足で歩くようになってからは、小さなお店に目が行くようになりました。
19歳の時に受けたオーディションで出会った映画監督の石井裕也さんが当時阿佐ヶ谷に住んでいて、20歳になってからはスターロードの中にある飲み屋に連れていってもらったりしましたね。居酒屋やバー、ごはん屋さんだったり、スターロードに子どもの頃とは違う新たな“行きつけ”ができて、交友関係が広がることもありました。
なんというか、「俺のスターロード第2章」がはじまった感じで(笑)。この街が、時を経てさらに自分にフィットしていく感覚が不思議です。

街に対しての反発心ですか? それはなかったですね。
コロナ禍以降、おばあちゃんがいるので実家にはあまり帰っていませんし、阿佐ヶ谷に飲みにも行けていませんが……。あらためて間口が広くていい街だなあと思うし、ここにいれば生きていける気がするし、このまま変わらないでいてほしいです。

阿佐ヶ谷のいいところを語っておきながらあれですが、実は歳をとった自分が東京で暮らしているイメージはあまりありません。

東京という街の“更新し続ける”サイクルが、自分には合っていない気がしていて。
東京以外の場所で生活をしたことがないので違う環境への憧れもありますし、いろいろなものがありすぎる東京の、そのシステムの外に出てみたいという思いもあります。

僕は、すごく欲深い人間なんですね。東京はその「欲」を確実に満たしてくれるのですが、このサイクルの中では本当に大切なものには巡り合えないんじゃないか? ということに薄々気づいている自分もいて。

何でも手に入る東京とは違う場所で、違う自分を育みたいという思いがあります。浮き沈みの激しい仕事ですし、自分自身を時代の大きな流れとは違う場所に置きたいというか……。そうでないと、何を本当に大切にするべきなのかわからなくなってしまいそうで。

人間の本能で“バランスをとりたい”と無意識に感じているのか、自分の性質がそう思わせるのか、はたまた「東京」という街がそうさせるのか?
歳を重ねた自分が東京を離れている可能性は低くないな、と思っています。


仲野太賀 Taiga Nakano

1993年、東京都出身。2006年に俳優デビュー。昨年は『静かな雨』『生きちゃった』『泣く子はいねぇが』の3本の主演作含め、7本の出演映画が公開。ドラマ「あのコの夢を見たんです。」(主演/TX)、「この恋あたためますか」(TBS)の出演も話題に。本年もすでに『あの頃』、『すばらしき世界』と2本の映画が公開され、2021年4月17日よりスタートするTVドラマ「コントが始まる」(日本テレビ・毎週土曜22:00~)に出演する。趣味はカメラ。

仲野太賀さん

東京と私

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2021/03/31

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