メイン画像
堀井和子さんの「いいもの」のファイル

第46回:木製のハンガー/プロヴァンスのカゴ/バターナイフ/タヒチのスケッチブック

文・写真:堀井和子

 フランス南部、スペインとの国境近くのBoulouという街のホテルに泊まりました。2010年5月末、静かで、庭で食事がとれる小さいホテルをミシュランで探し、点々と廻るドライブ旅行をしました。

 エントランス脇のローズマリーやバラ、石を積み重ねた門や壁が、外のテーブルによく合っていて、反対側の山や松の林はブルーグレーの夕暮れの闇に包まれてしんとしていました。

ハンガー

 部屋に入って、コート掛けのハンガーに目がとまりました。しっかりした木目で、ひとつひとつ、その木目が違うハンガーが揃っていたのです。窓から見える針葉樹の材を使って、地元の職人さんが製作したのではないかと、ふと想像して寛いだ気持ちになりました。

え

 30年くらい前の旅で見つけた、フランスのプロヴァンス地方のカゴ。
 その頃はNiceやSt-Remy-de-Provence、Cavaillonなどの街に、魅力的なカゴ専門店があり、買って帰りたいカゴがたくさんあって、選ぶのが大変でした。

 その後だんだん、フランスで作られているカゴに出合えなくなり、一番ワクワクするカゴは、地元のマルシェでマダムが提げている長年使いこんだ買物カゴかもしれないと、見るだけの楽しみに。昔見たカゴを思うと、あの時選ばないで、他の形やサイズのものも買っておけばよかったと判断を後悔することも。

 カゴは編む技術だけでなく、材料の木を見つめ、その木の個性に近付き、編みかたによって生まれる何ともいえない表情を知っていく年月が大事なんですね。籐の材質が揃っていて、すごく美しい。同じ編みかた、フォルムでも何かがすごく違う —— 昔のカゴを見つめるたびに心を揺さぶられます。

寄せ植え

 1990年代に、雑誌の“こんなものが欲しい”という企画で作ったバターナイフです。ステンレス製のナイフを選んで、森下の職人さんに籐を巻いてもらいました。

 当時白っぽい色合いだった籐について“経年変化が楽しみ”と書いたのですが、30年経過して、やっとこんな色に。今の様子が、ぐっと美しく感じられますが、洗う時に籐の部分を擦ってしまうと艶がなくなるので、実用的なタイプではないです。

 “ありそうでないものを作ってみたい”の1作目かもしれないこのバターナイフ、実用的ではなくても、何だか気に入って大事にしています。

 オフホワイトのアイリッシュリネンのテーブルクロスは、ハリがあって、大らかにフワッとしています。
 テーブルに掛けた時、他のコットンのクロスとは違う、不思議に澄んだ贅沢感が漂うことを知りました。 

寄せ植え

 香月泰男のスケッチブック 4 "à TAHITI"(求龍堂)。
 タヒチに行ったことはありませんが、香月さんの描いたヤシの木や南の島の白い花、ニワトリを見ていると、心が長閑にほどけて瑞々しくなれます。

 いい空気を吸って、いい風を浴びて、旅行をしているような弾んだ感覚を持てる気がします。

寄せ植え

Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


前の回を見る <  > 次の回を見る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

2022/02/22

  • イメージエリア

  • テキストエリア

    CLASKA ONLINE SHOP

    暮らしに映えるアイテムを集めた
    ライフスタイルショップ

    CLASKA ONLINE SHOP