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21のバガテル モノを巡るちょっとしたお話

21のバガテル Ⅱ
第7番:What a wonderful small world
自作のアッサンブラージュ

文:大熊健郎(CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター) 写真:馬場わかな 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
大熊健郎 Takeo Okuma
1969年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、イデー、全日空機内誌『翼の王国』の編集者勤務を経て、2007年 CLASKA のリニューアルを手掛ける。同時に CLASKA Gallery & Shop "DO" をプロデュース。ディレクターとしてバイイングから企画運営全般に関わっている。


ラウンジチェア
昆虫用の標本箱にソール・スタインバーグについての古い新聞記事やポストカード、小さな作品集、スタインバーグが作品のモチーフにしていそうな古い定規などを配置構成した。題して「ソール・スタインバーグ研究」。

 「男は箱好き、女はかご好き」とある人が唱えていたのを本で読んだが、これはなかなかの名言である。確かに周囲にいる雑貨好きな男女を思い浮かべると当たっているから面白い。かくいうわたくしも例にもれず、チョコレートの箱やらクッキーの缶、香水や石鹸の箱など、何に使うわけでもないのに気に入った箱を目にすると捨てられずに取っておいてしまう悪癖がある。引っ越しの度に空箱で埋まった段ボールを見ては「これどうするつもりなの?」と自問するのだが……。

 「箱」で思い出すのがジョセフ・コーネルである。コーネルは標本箱のようなガラスで蓋をした箱の中に古い写真や雑誌の切り抜き、星座図、様々な古道具、貝や流木などをコラージュしてつくるアッサンブラージュ作品で知られるアーティスト。裕福な家庭に生まれながら、その後人生の不運に見舞われ、セールスなどの仕事をしながら家族を支えたコーネル。そんな生活の傍ら、内的、夢想的世界に逃避するかのようにニューヨークの自宅地下にあった小さなアトリエで「箱」づくりに没頭していたという。コーネル自身はそれらの「箱」を「詩的な劇場」と呼んだ。

 コーネルの作品には現代アートの世界にありがちな、観るものを拒絶するような難解さや刺激的な表現、強いメッセージ性は見当たらない。慎ましく密やかな作品は音楽に例えると室内楽といった感じで、アートというには時にロマンティック過ぎるとさえ思えるほど抒情的な作品も少なくない。それでもその箱と箱の中の事物とが織りなす例えようのない詩情に理屈抜きにキュンとしてしまう不思議な魅力がある。

 「箱の作品」に魅了され、何度も見ているうちに自分でも真似してつくりたくなってしまった。それでつくってみたのが写真の箱たちである。といっても標本箱や好みのガラスケースを見つけては、ただその中に組み合わせを楽しみながらモノを並べただけなのだが、この作業が思いのほか楽しい。ガラスの箱に入れるだけで、何でもないものが何か特別なオーラでもまとったかのように詩的に見えたり、色々なものを組み合わせて並べるとなにやらストーリーめいたものが立ち上がってくる気がして飽きないのである。

 「壺中天こちゅうてん 」なんていうと大げさかもしれないが、小さな壺の中に桃源郷のような別世界を夢想するがごとく、ガラス箱の中に自分だけの小さな「世界」をつくりあげる。それはどこか遠い昔、夢中になってひとり遊びをしていた子ども時代にかえったような気持ち、「遊び」が最も純粋だった頃を思い出すのである。

ラウンジチェア
アンティークショップで見つけた白いスチール製のガラスケースに本や雑貨、空き箱など脈絡のないモノが並ぶ。テーマはなく、ただ様々なオブジェのかたちや色で遊んだもの。

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2021/11/29

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