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21のバガテル モノを巡るちょっとしたお話

第14番:GOOD OLD BOYS
「JUDGE WARE(ジャッジウェア)の鍋と洗面器」

文:大熊健郎(CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター) 写真:馬場わかな 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
大熊健郎 Takeo Okuma
1969年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、イデー、全日空機内誌『翼の王国』の編集者勤務を経て、2007年 CLASKA のリニューアルを手掛ける。同時に CLASKA Gallery & Shop “DO” をプロデュース。ディレクターとしてバイイングから企画運営全般に関わっている。

JUDGE WAREは1896年にイギリスで創業したキッチンウェアのメーカー。長い持ち手が特徴的なこの鍋は1930年代頃に製造されたもの。サイズは直径16㎝高さ15㎝、持ち手の長さ21㎝。

 海外のテレビドラマを観ていて感心するのが個々の役柄に対する性格設定の緻密さというか、その徹底ぶり。脇役や端役まで個々のキャラクター付けがしっかりされていて、誰を主役にしてもドラマが成り立つほど。それに加えて三話くらいつくれそうな内容を一話で完結させてしまうドラマの濃厚さにもときどきびっくりする。脚本家の力量なんですかねえ。

 ところで我が最初の海外ドラマ体験といえば、なんといっても「大草原の小さな家」。小学生から中学生時代にかけて毎週観ていたこのドラマが、僕の道徳的感情の基礎を築いたといいますか、情操教育を担ってくれたと言っても過言ではない。西部開拓時代のアメリカを舞台に描かれたこの家族の物語が好きだったという人とはきっと仲良くなれると思っています。

 その後夢中になったのが今度は高校生から大学生の頃にかけてテレビ放送されていた「シャーロック・ホームズの冒険」。主役のホームズを演じたジェレミー・ブレットの名演、怪演ぶりも凄かったけれど、それ以上に僕の関心を惹いたのはドラマのセット、家具や室内装飾、衣装といった美術や小道具などである。ちょっとした小物に至るまで出てくるもの一つひとつに血が通っているといいますか、本物感、イギリス的重厚感に満ちている品々にうっとりしていた。

 フランスやイタリアのモノも大好きだけど、イギリス製品の魅力というのはまた特別のものがある。かつて世界の頂点に君臨し、栄華を極めた大英帝国の繁栄と、しかしながら堅実を重んじる国民的気質がハイブリッドされたような魅力というのかな。フランスやイタリア的デザインが良しとする色っぽさを潔く排除し「男は黙ってサッポロビール」的な寡黙で質実剛健な存在感のうちに宿る美学とでも言いましょうか。

 そんな大英帝国らしさを感じさせてくれるのがこのジャッジウェア社の琺瑯鍋と洗面器。まず黒という色がいい! 日用品に敢えて黒を使うところがイギリス的だなあなんて思ってしまう。デザインも実用に徹していて無駄がない。80年位前にイギリスで製造されたものらしいが、実は使われていたのはイギリス統治国時代のインド。よく見ると鍋やたらいの本体に小さくヒンズー語らしき文字が彫られている。おそらく所有していた家族の名前なのでしょう。

 今から4,5年前だったろうか、近年最高にはまっていたイギリスのテレビドラマ「ダウントン・アビー」を観ていたときのことである(昨年公開された映画ももちろん観ましたがテレビ版の続編をぜひ再開してほしい!)。舞台となっていた20世紀初頭のある貴族一家の館「ダウントン・アビー」の地下の厨房で、なんとこの持ち手の長い黒い鍋が銅製の鍋と一緒に使われていたのを見た時は嬉しかったなあ。興味のない人にはどうでもいい話だと思いますが……。

アンティークの琺瑯製品といえばファンシーな色使いのものが少なくないが、黒と白という甘さを拒否した色の組み合わせがかえって新鮮。実用度も高く、衣類の漂白や足湯などにも使えて便利。直径36.5㎝、高さは12㎝

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2020/09/08

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