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21のバガテル モノを巡るちょっとしたお話

第3番:大人だっていいじゃない
「シュタイフ社の古いゾウのぬいぐるみ」

文:大熊健郎(CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター) 写真:馬場わかな 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
大熊健郎 Takeo Okuma
1969年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、イデー、全日空機内誌『翼の王国』の編集者勤務を経て、2007年 CLASKA のリニューアルを手掛ける。同時に CLASKA Gallery & Shop “DO” をプロデュース。ディレクターとしてバイイングから企画運営全般に関わっている。

ベルリンで買った象のぬいぐるみの「ボウヤ」。おなじみの耳のタグがついていませんがたぶんシュタイフ社のもの。

 「いい歳した大人の男がぬいぐるみだなんて……」。笑いたい者は笑えばいい。もう立派なオジサンではありますが僕はぬいぐるみが好きである。しかしながら、小さい頃からぬいぐるみを離さないような子どもだったわけではない。むしろ大人になってからその魅力に目覚めたといってもいい。

 もちろんぬいぐるみなら何でも、なんてことは全くない。むしろ好みは非常にうるさいのである。ファンシーなやつはまずだめ。毛が妙にふわふわで、淡いパステルトーンでいかにも子どもに媚びたようなやつ。ああいうのは嫌ですね。あんなの大人の貧しい想像がつくり出したニセモノじゃないか。

 じゃあ、アンタはどんなのが好きなの、と聞かれると少し困る。でも言えるのはやっぱり顔。ぬいぐるみも顔が命なのである。とはいえ僕の好みは断然ブサカワ系。「私かわいいでしょ!」とあからさまに顔に出ているようなのはダメ。

 どこかぼーっとしているような、拗ねているような、あるいは何も考えていないような、ちょっとおバカさんなんじゃないかと思えるような顔が好き。あとやっぱり少しぽっちゃり系がいいかな。なんてこれ以上続けると「お前がバカなんじゃない」と言われそうなのでここらでやめておきます……。

 昔、買付けの仕事をしていたとき一度だけベルリンに行ったことがある。アンティークショップなどを探して街をブラブラ歩いていると、少し寂れた看板にAntikという文字のある店が目についた。店に入るとそこは古いぬいぐるみの専門店。どこかヨーロッパ的な哀愁漂う、疲れた感じの店内がなんともいい。

 「僕は今、日本から遠く離れたベルリンの古いぬいぐるみの店にいます」と誰かに手紙を書きたくなるような気分に浸りながら店内を物色していると、ちょっと寂しそうな顔をした象のぬいぐるみがあった。それが写真の「ボウヤ」(象に命名した名前)である。

 名前をつけることでぬいぐるみも家族になる。友人だった今は亡きイラストレーターの阿部真理子さんは大のぬいぐるみ好きで、自らを「ヌイグラー」と称していた。いつもたくさんのぬいぐるみに囲まれていたが、中でも相棒同然に可愛がっていたのがシュタイフ社製の巨大なクマのぬいぐるみの「モーリー」。

 「モーリー、モーリー」といつも呼び掛け、ご本人もどこかクマのぬいぐるみのような真理子さんだったが、彼女とのおしゃべりの何よりの楽しみは、鋭くてユーモアのある全方向的な毒舌。会うと二人でアレコレ悪口三昧言い合っては大笑いしていたのが懐かしい。ぬいぐるみ好きだからといって油断すると痛い目に合うので気をつけてね。

家族の肖像。左からマシュー、キンノスケ、チャウ、手前の黒いのがクニヨシ。

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2020/03/23

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