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21のバガテル モノを巡るちょっとしたお話

第1番:終生の友だち
「ミシェルソンヌのトイピアノ」

文:大熊健郎(CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター) 写真:馬場わかな 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
大熊健郎 Takeo Okuma
1969年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、イデー、全日空機内誌『翼の王国』の編集者勤務を経て、2007年 CLASKA のリニューアルを手掛ける。同時に CLASKA Gallery & Shop “DO” をプロデュース。ディレクターとしてバイイングから企画運営全般に関わっている。

 いやあ、何が悲しいって最初に譜面を前にしたときの絶望感。どう考えてもこれは無理、一体何年かかるだろう、いやひょっとしてこれが人生最後の曲……、といった考えが頭をよぎりながらもチクチク、コツコツ毎日指を動かしていると、これがですよ、トンネルを掘るようにほんの少しずつ進んで、ついに最後まで到達。この時の感動といったら、涙が出そうなほどに嬉しいものなのです。ってなんの話かといえばピアノの話。そう、僕は40代半ばを過ぎる頃にピアノをはじめたのである。

 実は幼少時にピアノを習っていたことがある。母親が子どもたちにピアノを教えていたので、半ば強制的にやらされていたのだ。ただじっとしていられない子どもだった僕は、とにかく外に遊びに行きたくてピアノから逃げ回り、小学校の卒業も待たずに早々にドロップアウトしてしまった。

 高校生になった頃、少し色気が出てきて(まあモテたかったのでしょう)ピアノを再開しかけたが、生来の根気のなさがたたり続かず……。以来もっぱら聴くほう専門で音楽を楽しんできましたが、歳を重ねるにつれまたピアノが弾きたいという思いが強くなってきたのですね。とはいえ、ただでさえ狭い上に、モノに埋もれた生活をしていた僕の部屋にピアノを置く余地はなく……。そんな時、その埋め合わせというわけではないが、蚤の市で見つけて購入したのがこのトイピアノである。

 Michelsonne Paris(ミシェルソンヌ)というフランスのトイピアノメーカーのもので、1939年から1970年まで製造されていたもの。かたちはご覧の通りアップライト型で、鍵盤部分が折りたためる仕組みになっている。これは25鍵(2オクターブ)のタイプだが、13鍵、16鍵、30鍵、37鍵、一番大きなもので49鍵(4オクターブ)というものもあったらしい(欲しい!)。ベルトーンと呼ばれる少し金属的な高くてよく響く音が特徴で、今でもプロのトイピアノ奏者が多く使用しているとか。

 数年前に引っ越しをして少しスペースができたので、思い切って本物の中古ピアノを手に入れた。あれから40年。あんなに逃げ回っていたピアノを弾くことが今では何よりの楽しみになるなんて、人生わからないものである。それでもトイピアノの魅力に目覚めた僕は、仲間も増え、今でもオブジェのように飾って、触ったり、眺めたりして愛でております。いずれにしても楽器と共にある生活ってなんかいいものですよ、と声を大にして言いたい今日この頃なのである。

こちらは、1872年にアメリカで創業したシェーンハット社のトイピアノ

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2020/02/21

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