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若者のすべて なんだか、未来が楽しみになる。今を生きる20代の若者たちと、他愛のないおしゃべりを。

第14回:さのるり(陶芸家)

東京生まれ東京育ち。
大学在学中に土器の魅力を知ったさのるりさんは、
都内の飲食店を拠点に制作活動を続けてきた。
現在は鹿児島に拠点を移し、日々の仕事と同時進行でものづくりをする日々。
旅立つ直前に聞いた、土器との出会いとこれからのこと。

写真:Maya Matsuura 文:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

さのるりさん

さのるり

1998年、東京生まれ。武蔵野美術大学在学中より土器の制作をはじめ、現在は鹿児島県伊佐市で「地域おこし協力隊」として活動の傍ら、自身の作品の制作を行っている。

Instagram:@sanoruri
Onlineshop:https://sanoruri.thebase.in/


素材としての「土」が好き

東京・神楽坂にある「さいめ」というお店にお邪魔しているのですが、こちらのお店の地下スペースを制作の場にされているそうですね。

そうなんです。オーナーの嶋田さんは料理人であり、土器の制作者でもあります。私がつくったものを嶋田さんが料理の仕事の合間に焼いてくださるのですが、東京都内で、こういうかたちで制作ができるのはすごいことだと思います。「さいめ」は土器焚き(土器を使った料理)のお店で、普段、料理を土器で調理してお客さまに提供しているんですよ。

ちなみに、こちらで制作をするようになったきっかけは?

私は「武蔵野美術大学」の出身なのですが、学校に土器の作家をしている先生がいて、その方が嶋田さんとの接点をつくってくださったのがきっかけです。
土器

さのるりさんは何学科だったんですか?

工芸工業デザイン学科です。実は、もともとすごく焼き物が好きだったわけではなくて。土という素材の柔らかさは好きでしたけど……。テキスタイルを学ぼうか迷っていたくらいで。

美大を目指そうと思ったきっかけは?

高校進学の段階で大学で美術を学ぶことを見据えていたので、美術学科のある大学の付属高校を選びました。勉強もできなかったし美術だけ成績が良かったから、それしか道がないなって(笑)。結果的にはその大学ではなく、武蔵美に進学することになったのですが。

ご両親も美術系のお仕事をされていたりするのでしょうか。

東京の中目黒が地元なんですけど、父は飲食店を経営していて、母は昔洋服のパタンナーの仕事をしていました。いわゆる一般的なサラリーマン家庭じゃなかったからか、大学を出て会社員になるという選択肢はあまりなかったですね。
さいめ

一般的な焼き物と土器の違いはなんですか?

一般的な焼き物は、低い温度で素焼きをしてから釉薬をかけて、さらに高い温度で焼くという制作工程なのですが、土器の場合は素焼きの段階で完成なんです。

なるほど。ということは、出来上がるのも早いということですよね。

そうです。今日も焼いてみようと思っていて。

えっ? 今日この場で?

ここで焼けるんですよ。店内で(笑)。土器で野菜を調理する時に使う炭の中で、土器も焼いているんです。大体600度から800度ぐらいの温度で焼くのですが、これがちょうど素焼きにあたる温度なんですね。
さのるりさん
炭火

びっくりです。成形した後、乾燥にはどれくらい時間がかかるんですか?

気温や湿度によって変わりますが、最低2日間は乾燥した方が良くて、1週間乾燥させればばっちりですね。

なるほど。素朴な疑問なのですが、なぜ土器だったんでしょう。

素材としての「生の土」がすごく好きなんですけど、学校の課題で陶器をつくった時に、焼き締めてカチカチにしてしまうと土の風合いを残すのが難しいなぁと思ったんです。もっと低い温度で焼いた方が、柔らかくて可愛いものができるんじゃないかな……と。そう思って制作をしているうちに、つくるものがどんどん土器になっていった、という感じです。

土器は循環するから面白い

こうやって眺めていると、なんだか可愛くて愛おしくなってきますね。なんだか抱っこしたくなる感じ。

生活空間に置いた時に、あまり緊張感がないものをつくりたいなと思っています。そばにあることで、気持ちが優しくなれるようなもの。自分もそんなきっちりしてるタイプじゃないので(笑)。つくるものもそれに合わせた方がいいかなって。
土器

土器は自分らしいな、って感じですか?

そうですね。あとは私、火を眺めるのが好きなんですよ。落ち着きます。父が炭火を使った料理をする料理人だからでしょうか。

土器をつくることと料理をすることって繋がっている気がしますよね。素材を加工して、それを火で焼く(調理する)っていう。ちなみに、土器の面白いところはどういう部分だと思いますか?

土だけで完結しているところでしょうか。陶器は焼き締めてガラスでコーディングしてあるけど、土器は素材が土のみなのでシンプルですよね。あとは、循環するところかな。陶器に比べるとやはり壊れやすいのですが、割れてしまったら細かく砕いてザルに通して粉にして、その粉をまた土に混ぜればまた新しい土器に生まれ変わるんです。そういうところも好きですね。

なるほど、陶器だとそうはいきませんものね。

そうですね。相当頑張って砕かなきゃいけない(笑)。
土器制作風景

この春に大学を卒業されたそうですが、間も無く鹿児島に移住されるとか。

そうなんです。「地域おこし協力隊」として。東京にいても楽しかったとは思うんですけど……。東京以外の土地の土を使って土器をつくるとか、もうちょっと色々挑戦してみたいなという思いがあって。最初から地方に行こうと考えていたわけではないんですけど、たまたまご縁があったという感じです。

一般企業への就職活動もされたのでしょうか。

少しだけ。陶器に関連した会社を受けたりしたんですけど、面接の時に「あなたは一生作家にならずに会社員として働く気概はありますか?」というようなこと聞かれた時に「はい」って言えませんでした。それだけが理由じゃないですけど、一人でやっていこうと思って途中で就活はやめちゃったんです。

どういう経緯で鹿児島へ行くことが決まったんですか?

インターネットで焼き物関係の求人をなんとなく見ていた時に、「地域おこし協力隊」という制度があることを知りました。色々調べてみたら、これから私が移住する市で工芸・ものづくり部門の募集があったんです。特に鹿児島に知人がいるわけではなくて、完全に一人で。

そうなんですね。

地域のために仕事をすることが一番の軸になるので、それ以外の時間を使って、できる範囲内で自分の作品をつくれたらいいなと考えています。自分のオンラインショップを持っているので、そこで鹿児島でつくった作品を販売できたらいいなと思いますし、コロナが収束したら地元の人に制作の現場を見てもらうようなイベントもできたら面白そうだなぁとか。色々考えていることがあるんです。
さのるりさん
さのるりさん

最終的に、土器をつくることを仕事にしたいという気持ちはありますか。

あります。でも、「誰かの暮らしの中に自分のつくったうつわがあったら嬉しいな」という思いが根底にあるので、土器だけにこだわるのではなくて色々なことに挑戦してみたいですね。前に自分がつくった小さい土器を友達にプレゼントしたことがあったのですが、その子が飼っているハムスターが土器を寝床としてめちゃくちゃ気に入ったらしくて。それを聞いた時に、自分がやりたかったことができた気がしてすごく嬉しかった!

いいですね。

やっぱり日常的に使ってもらえると嬉しいです。土器は繊細なものなので壊れやすいし、丁寧に扱いたくなるんですけど、気を使わない日用雑器みたいな土器をつくりたいなって思いますね。鹿児島で挑戦できたらいいな。

思わず顔がほころぶようなものを

ものづくりをする時、どんなものからインスピレーションを受けることが多いですか?

植物や動物でしょうか。特に猫。大好きなんです! 家で飼っている猫が三毛猫なのですが、この丸い壺を焼いた時にすごくその三毛猫と被って。かわいいなあって思って(笑)。
土器

たしかにその壺、三毛猫感ありますね(笑)。

ですよね! 角ばっていないものが好きなのかな。轆轤を回しながら「なんか女の人っぽいなぁ」って思いながらつくることもあるし。自分の作品は生き物っぽい気がします。

さのるりさんのものづくりに影響を与えた人や作品はありますか?

小さな頃からテレビや映画が好きで、特にお笑い番組が大好きでした。芸人さんって人を笑顔にする仕事じゃないですか。私もそういう風になりたい、誰かを楽しませたいってずっと思っていました。その人の笑い方とか存在だけで笑わせちゃったりするじゃないですか。それってすごいこと。私もそんな土器をつくりたいなぁと思います。そばにあると楽しくなっちゃうような。

現在23歳。鹿児島に移住することで色々なことがガラッと変わりそうですが、10年後の自分はどうなっていると思いますか?

今はあまり想像がつかないんですけど、周りに人がいたらいいなって思います。一人で黙々とものづくりをしているのではなく、色々な人と繋がって楽しく仕事出来ていたらいいなと思いますね。
さのるりさん

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2021/10/06

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