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若者のすべて なんだか、未来が楽しみになる。今を生きる20代の若者たちと、他愛のないおしゃべりを。

第8回:この春、見えてきたもの

今回は特別編。
本連載の写真を担当しているMaya Matsuuraさんは、昨年末からデンマークをベースにした生活を送っている。
3月12日以降、日本と同様にコロナウィルスの影響で日々の生活が様変わりしたデンマーク。
これまでにこの連載に登場いただいた方たちと同様、20代の若者である彼女が見たもの感じたものを、等身大の言葉で綴ってもらった。

写真・文:Maya Matsuura 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
Maya Matsuura

1993年生まれ。東京とコペンハーゲンを拠点に活動するフォトグラファー。ここ数年は、デンマークのテキスタイルアーティストのものづくりを追ったドキュメンタリーなど、映像制作にも取り組む。
Instagram:@mayanoue


カラフルな水着でベンチに寝転がるおじさん。
ビール6缶パックを片手に自転車に乗る女の人。
裸足でアイスを食べる男の子。
そのとなりで豪快にホットドックにかぶりつくおばあちゃん。
歩道に飛び出したテラス席には、日焼けとお酒で真っ赤な顔した人たちが並んでいる。

21時。まだまだ沈まない北欧の夏の太陽に照らされてオレンジ色に染まった人たちの顔には、はみ出すくらい大きな文字で「最高だよ」って書いてある。不確かなことばかりだった自粛期間も本当にあったのだろうかと思ってしまうほど、天国みたいな光景だ。

でも、それはたしかにあった。刺さるような冬の空気が少しずつやわらかくなりはじめた3月中旬、デンマーク政府が外出自粛を呼びかけた。国境封鎖にはじまり、教育機関や美術館などの公共施設、レストランやカフェも閉鎖。フェスやマーケットなどのイベントもすべてキャンセルされた。
覚えているのは自粛がはじまったその日から約2ヶ月間、まったくと言っていいほど雨がなく真っ青な青空が続いたこと。「こんなに待ちわびていた春をすべてもっていかれた」とみんなが皮肉に思った。

そんな自粛期間の私のいちばんの楽しみは近所の公園までの散歩だった。幸いなことにデンマークでは外出禁止まで厳しいルールもなく、十分な距離をとれば散歩をしたり、公園でピクニックをすることも許されていた。撮影や執筆の仕事もほぼなく、遠くに旅行にも行けない私は、1日のほとんどを公園で過ごし、晴れた日は公園でゴロゴロする人たちをゴロゴロしながら眺めた。

冬の間は死んでるみたいだった並木道の木々に小さな葉がつき、足元には名前もよく知らない野花が咲き始め、気がつけば陽も伸び、カーテンを開けたまま寝ていると外の明るさで朝5時には目が覚めてしまう。

いつのまにか、夏になっていた。

一方でこの数ヶ月、世界は今までになくざわざわしていた。SNSは本当かどうかもわからない情報で溢れ、毎日のように流れてくる悲惨な状況がみんなの不安をより大きくした。
SNSをシャットアウトする人、自分の気持ちを言葉や絵、音楽にする人、料理動画をつくる人、大切な人に手紙を書く人、ビデオチャットでエクササイズをする人……。それぞれが、このざわざわを消化する方法を探していた。

ただこのざわざわは、今にはじまったことではない。ただ昔よりよく見えるようになってしまったのかもしれない。遠い世界のことと思っていた問題の多くが、自分の手の中の小さなスクリーンに映し出され、それを見なかったことにはできないのがこれからの私たちが暮らす時代だ。

「どう生きるのか」。
自粛期間中、いろんなところで話されたこの問いに、世界中で起きているさまざまな問題と向き合いながら答えを出すことはそう簡単ではない。

多くの人がこのざわざわに気づいた今、何かが変わるのでは?

そんな空気が世界中に広がる一方で、何も変わることなく季節どおりに咲きはじめる花や新芽。この数ヶ月で、私のカメラロールはそんな花や緑でいっぱいになった。

向き合わなきゃいけないことは、これからもたくさんある。知らないことは学び、自分なりに考え、争いではなく会話を重ね、新たな方法を探していかなければならない。ただ大切なのは、それとちゃんと向き合うために、ざわざわに飲み込まれないこと。

目の前の変わらないものをよく見て、大切に。

(おまけ)自粛期間中にあったことを書き出してみた。

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2020/06/13

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