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若者のすべて なんだか、未来が楽しみになる。今を生きる20代の若者たちと、他愛のないおしゃべりを。

第4回:millitsuka (イラストレーター)

今回登場していただくのは、イラストレーターのmillitsukaさん。
私たちが日常生活の中で何気なく目にしたり、ぼんやりと想像していること。
もしも、それらすべてを彼女の描くイラストに変換できたならば、
この世界は、どんなにか色鮮やかで面白いことだろう。

写真:Maya Matsuura 文・編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

こういう景色を、夢の中で見たことがある。

millitsuka(ミリツカ)
1991生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、会社勤めをしながらイラストレーターとしての活動をスタート。
https://millitsuka.tumblr.com
Instagram:@millitsuka
Twitter:@millitsuka


現実と非現実の間を描く

「坪庭」
「朝を迎える場所が決まらなかった日」
「NIGHT BUS」

私がmillitsukaさんのイラストをはじめて見たのは4年くらい前なんですけど、その時からずっと印象に残っていたんです。

millitsukaさん(※以下敬称略):
ありがとうございます。

「夢の中の世界をイラストにしたら、きっとこんな感じなんだろうな」と。なんだか、現実と非現実の狭間を見ているような不思議な気分になるんですよね。イラストを描きはじめた時から、この作風は変わらないんですか?

millitsuka:
描いているものは変わらないですけど、はじめた頃はもう少し色が明るくて線も細かったんです。最近は少し色味が落ち着いてきました。深いところは深い、みたいな。

描いているものやシーンは、想像の世界なのでしょうか。

millitsuka:
想像で描いている作品もあるんですけど、大なり小なり実際に自分が見たものや体験したことをパーツとして取り入れています。

日常生活の中で見たもの?

millitsuka:
そうですね。私、趣味が散歩なんです。歩いている時は常に“面白い瞬間”とか“偶然”を探していて、「いいな~」と思ったらそれをデジカメで撮っていて。でも、撮った写真を見ながら描くというよりは、頭の中にある記憶を頼りに描きます。記憶のパーツをコラージュする感じでしょうか。ごくたまに、写真で撮ったものをそのまま、ということもありますけど。
いつも持ち歩いているデジカメ(写真上)。イラストを描くときには、コーヒーとキャンドルが欠かせないそう(写真下)

基本的には“リアル”なんですね。

millitsuka:
はい。本当に、大したことない出来事や瞬間を描いてるだけです(笑)。「ケーキを買って、満員電車に乗った」とか、「夏のはじまりに、水の割合が多いシャワーを楽しんでいるところ」とか「日曜だから、まだもう少し寝ていていい」とか。

そういう何気ないシーンや体験をmillitsukaさんのイラストを介して見ると、何かセンセーショナルな“事件”のように感じるんですよね(笑)。不思議です。

「水まみれの夜」
「週末」

「今日も一日よくやったな」という気分で眠りたい

いきなり作品の話からはじめてしまいましたが、millitsukaさん、出身はどちらですか?

millitsuka:
東京です。大塚の方、巣鴨の近くで生まれ育ちました。小中高までは地元の学校に通って、その後は美大に。

もともと、美大志望だったのでしょうか。

millitsuka:
小さな頃から絵を書くのが好きではあったんですけど、特に早い段階から美大を目指していたわけではなくて、美術以外の勉強が苦手だったんです(笑)。さあ進路をどうしようというタイミングで、友人から美大を受験するための予備校があると聞いて、見学しに行ったんです。それがきっかけで、その予備校に通いはじめて。大学では、視覚伝達デザイン科を選択しました。

卒業後は、雑誌や書籍のデザインをする会社に就職したそうですね。

millitsuka:
そうなんですよ、まずは会社員に。4年間勤めて昨年退社しました。大学3年生くらいから具体的に将来の仕事について考えはじめたんですけど、「イラストレーターになりたい」という気持ちはありつつも、その時は選択肢として入ってこなかったんですよね。「いきなりフリーランスは怖いなぁ、家賃払ってご飯を食べられるくらいの稼ぎはなきゃ!」と。

会社に勤めていた時も積極的に描いていたんですか? おそらく、とても忙しかったのでは。

millitsuka:
そうですね。今振り返ると、かなり忙しかったんですけど、1日1作品描くことを目標にしていました。会社在籍中にも、展覧会への参加などイラストレーターとしての活動をしていたので、何か描かなきゃ生きた心地がしなかったというか。何も描かずに、仕事が終わって家に帰ってきて、ごはん食べてお風呂入って寝るだけって……それじゃヤバい! って。当時は、大体21~22時くらいに家に帰る日々だったんですけど、それから描いていましたね。
会社員時代から書き溜めた下絵。ほぼすべて保管してある

1日1作品って、なかなかハードですよね。

millitsuka:
制作にかけられる時間が限られているので、すべてがアナログ作業だと1日じゃ終わらない。仕事の休み時間に下書きや線画などを描いて、家に帰ってパソコンに取り込んで色を塗る、という流れで制作していました。今でも、基本的にはこの手順。枠だけ定規を使って、あとはフリーハンドで絵を描いています。

モチベーションは、「ゆくゆくは独立したい」というところにあったんでしょうか。

millitsuka:
というよりも、当時は自分自身の精神のバランスをとっていた感じですかね。「今日も1日よくやったな」という気持ちで眠りたいというか(笑)。そうじゃないと、気持ちがやられちゃう気がして。
線画を描くときは、ポスカを使って

パソコンの中から作品を取り出す

millitsukaさんの作品は、色味がとても印象的なんですけど、基本的にはすべてデジタルで描いているんですか? 

millitsuka:
基本はデジタルなんですけど、制作にかけられる時間が増えてからは、自分の手で描くことも増えてきました。でも、見た目はそんなに変わらないかな(笑)。最初に自分が選んだ描き方がデジタルだったので、完成形のイメージがRGBの色味で頭の中にあるんです。手で彩色するときも頭の中をそのまま再現するかたちになるので、手で描いても色味もデジタルっぽい感じになるんですよね。
個展「安心のプレイス」(2019年)の展示作品
グループ展「BlockHouseVR」(2019年)の展示作品。windowsのスクリーンセーバーをモチーフにしたもの

でも、近寄って見てみると手の痕跡を感じますね。油絵だと失敗しても上から重ねられますけど、これは一発勝負?

millitsuka:
そうですね。失敗したら最初からやり直しです。細かくマスキングしながらやるんですけど、デジタルで描く時よりも、頭と身体を使いますね。デジタルでの作業より時間がかかるし、絵について考える時間も長くなるし。

アナログで描いてみようと思ったのは、きっかけがあったんですか?

millitsuka:
デジタルで制作した作品は「データ」でしかないので、たとえばそれをどこかに飾って人に見せたい時は「印刷」という工程が必ず発生するわけです。そうなった時に、今の私個人で出来る印刷の技術には限界があるから、パソコン上で自分が見ていたものと出力したものとでは、どうしても色味が違ってきてしまうんですね。「本当の色味とは異なるものを見せている」ということに、ちょっとしたコンプレックスを感じていて。キャンバスに自分の手で描いた作品を展示している人をみると、「いいなぁ」って。

なるほど。データはデータで、さまざまなかたちに展開しやすい、という利点もありますけどね。

http://millitsuka.buyshop.jp では、不定期で作品をプリントしたオリジナルグッズを販売している
millitsuka:
そうなんですよね。それぞれにいいところがあるんだと思います。ここ最近は、「上手に人に見せる方法」をずっと模索しています。デザイン会社に勤めていた時に、「1_WALL」という公募展でファイナリストに選ばれて、銀座のギャラリーで展示をしたことがあったんです。一人につきひとつ壁を使って自由に展示ができる、という内容だったんですけど、「え、人に見せるんだ、どうしよう!」とメチャクチャ焦って。

パソコンの中から作品を出さなきゃ、と。

millitsuka:
そうなんです。その時は、紙で色々なかたちの立体物をつくって、ひとつの面に作品をプリントした紙を貼るという方法で展示したんですけど、終わってみたら色々と課題も見えてきて。「イラスト描く以外にも、やらなきゃいけないことがたくさんあるじゃん!」と半泣きでした(笑)。
2016年「1_WALL」展の展示風景

人に見せるための努力というのは、イラストを描くこととはまったく別のベクトルですものね。そもそもどういう環境で、どういう形式で、どんなかたちでやるのか、とか。

millitsuka:
この展示がきっかけになって、「人に見てもらうこと」をやらなきゃいけないと強く思いました。誰かに見てもらうことで、はじめて“描いた”ことになるんだ、と。課題も生まれましたが、自分の絵をどんな人が見てくれているのかを知れたのは、とても嬉しかったです。

作品の発表の場は、インターネット上が多いですか?

millitsuka:
頻度が高いのはそうですね。インターネット上にアップしても誰が見ているかわからないし、そもそも誰も見ていないかもしれないし……と思っていたんですけど、「1_WALL」の展示の時には遠くから見に来てくださった方もいたりして、すごく嬉しくて。ああ、見てくれている人が本当にいたんだ、って。

自分の作品を“サルベージ(救出)”する

作品を第三者に見せるひとつの手段になると思いますが、ZINEも制作されてますね。

一冊目のZINE『怪物が出るかもしれない』(写真右・http://millitsuka.buyshop.jp で購入可能)と、最新作の『悩めるツルツル浮き輪、問題のあるフローティングリング』(写真左)
millitsuka:
はい。『怪物がでるかもしれない』が、去年のTokyo Art Book FairのためにつくったはじめてのZINEなのですが、作品はすべてモノクロで印刷しました。それぞれにテキストを添えて。文章が考えるのが結構好きなんですよ。作品をデータで描いて保存する時に、名前を付けるじゃないですか? その作業も楽しくて。

言葉と一緒になると、また違った面白さがありますね。

millitsuka:
2冊目の『悩めるツルツル浮き輪、問題のあるフローティングリング』は、つい最近つくったばかりです。ZINEのイベントに誘っていただいたことがきっかけだったんですけど、これはカラーで印刷しました。

面白い! 大きなクリップで束ねているんですね。結構分厚い。

millitsuka:
200点くらい掲載しています。印刷は、ビジネス資料を大量に印刷しているところに依頼しました。本当はもっと色の再現性にこだわりたいし、当たり前ですが望んだ色味が出ていなくて腹立たしかったりするんですが(笑)。自分が描いた絵が、何のかたちにもならないまま無くなってしまうのは嫌だから、まずはこうやって本にすることで、サルベージ(救出)しなきゃ! って。
2冊目のZINEの表紙にしたイラスト

先ほど「人に上手に見てもらう方法を模索している」という話がありましたが、この先、どういうかたちで活動していきたいですか? なにか目標のようなものはあるのでしょうか。

millitsuka:
純粋に、イラストでご飯が食べられるようになったらいいなって思っています。自分なりに頑張ってはいるんですけど、頑張りが実を結びそうだったり、結ばなそうだったり……みたいな感じで。まだまだこれから、ですね。インターネット上に作品をアップして発表することは簡単だけど、“いずれ消えてなくなるもの”にはなって欲しくない。ずっと人に眺めてもらえるような作品をつくれたらいいな、と思っています。
表紙のイラストを担当した、小内光さんの詩集『わたしの虹色の手足、わたしの虹色の楽器』。
デザイナーは浅田農さん。東京TDC賞2020 のブックデザイン部門に入選した

ちょっとイラストから話が逸れるんですけど、この部屋に入った時からずっとぬいぐるみが気になっていて……。棚に、凄い数のぬいぐるみが(笑)。

大きさもモチーフもさまざま、カラフルなぬいぐるみが収納された棚
millitsuka:
あ、そうなんです。わりと最近集めはじめたんですよ。

可愛いなと思ったものを集めている感じ?

millitsuka:
というよりも……。たとえばクマのぬいぐるみだったら、立体の動物の姿を一度平面の型紙にして、それをまた立体に起こしてつくっているわけじゃないですか。その作業の流れが面白いなと思って。たまにすごくリアルなものもありますけど、「実際の姿とは似ても似つかないけど、何のぬいぐるみかが判る」ということが興味深いんです。ぬいぐるみをつくる人の“翻訳力”ってすごいなって。

なるほど。

millitsuka:
デフォルメの加減とか、勉強になるんですよ。自分がイラストを描くときも、見た風景やものをそのまま描くこともできるけれど、自分なりにかみ砕いて“なんとなくわかるようにする”ということが大事だなと思うので……ぬいぐるみからそういうことを学んでます。

思っていたよりも深い理由でした(笑)。

millitsuka:
いやいや(笑)。

これからも、どんなかたちでmillitsukaさんの作品と出会えるか、楽しみにしています。

millitsuka:
ありがとうございます。今は描いている時が楽しすぎて、その後のことを考えるのを忘れてしまうことも多々あるのですが、展示以外にもお仕事などでどうやったらたくさんの人に見ていただけて、記憶に残る存在になるのかを考えていきたいですね。

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2020/02/12

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