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TOKYO BUCKET LIST. 都市の愉しみ方 お菓子から建築、アートまで歩いて探す愉しみいろいろ。

第2回:皆川明のフィボナッチ曲線の宿

Profile
関 直子 Naoko Seki
東京育ち、東京在住。武蔵野美術大学卒業後、女性誌編集者を経てその後編集長を務める。現在は気になる建築やアート、展覧会などがあると国内外を問わず出かけることにしている。


「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展が、東京都現代美術館ではじまった。

ミナ(2003年からミナ ペルホネン)の展覧会は、2002年に東京・青山のスパイラルガーデンで行われた「粒子展」からはじまって、2010年の「進行中」、そして2015年の「1ミナカケル」まで、それまでの集大成のような展覧会をあるタームで同所で開いてきた。

「1ミナカケル」は、長崎県美術館でのミナ ペルホネンにとって最大級の展覧会へ発展。今回は、それを上回るスケールだ。

展示構成を担当したのは、2005年のパリでのショーデビュー、2009年のオランダ ティルブルグのテキスタイル・ミュージアムでの展覧会、スパイラルガーデンと長崎県美術館の「1ミナカケル ─ミナ ペルホネンの今までとこれから」も手がけた、気鋭の建築家 田根剛。

Photo:吉次史成

今回は、実、森、風、芽、種、根、土、空、という8つのブースで展開。
「実」のブースは、ミナ ペルホネンのアイコンともいえる柄「タンバリン」の発想とテキスタイル制作、そしてそれが服だけでなく生活の場に生かされていった工程をみることができる展示だ。

Photo:吉次史成

「風」のブースでは、現代作家・藤井光による映像作品が、淡々と続く日々の営みの中にあるミナ ペルホネンの服を着る人の姿を浮き上がらせる。

さて、圧巻は「種」のブースに建造された建築、巻貝などをかたちづくる自然界の数列からなる対数螺旋「フィボナッチ曲線」を構造とする「シェルハウス」。
皆川明のアイディアをかたちにしたのは、建築家 中村好文。

Photo:吉次史成
Photo:吉次史成

「ラグジュアリーで限定的なものでなく、誰もが享受できる環境をつくる。 このアイディアで、安価で簡素な設えにささやかな親密さを持った宿が心に残るかどうか試してみたいのです。」

これは、5年前のスパイラルガーデンでの「1ミナカケル」展で展示されていた、将来の夢は? との問いに対する皆川明の答えだ。
この夢の具体的な答えがこの「巻貝の宿」。
これはすばらしい。

「shell house 平面図」
「shell houseのイメージ模型」

無印良品のコンセプトにもなった、田中一光のこの言葉も重なって見えてくる。

「簡素が豪華に引け目を感ずることなく、その簡素の中に秘めた知性なり感性なりがむしろ誇りに思える世界、そういった価値体系を拡めることが出来れば少ない資源で生活を豊かにすることができる」

ある頃から皆川明が目指すのはジオ・ポンティではないかと感じてきた。

建築家であり、名作椅子「スーパー・レッジェーラ」のデザイナーでもあり、リチャード ジノリの陶器やガラスのアートディレクション、テキスタイルのデザインも手掛け、ドムスの創刊にもかかわった「イタリアモダンデザインの父」と呼ばれた巨匠だ。

2013年に常滑のINAXライブミュージアムで行われた「建築の皮膚と体温─イタリアモダンデザインの父、ジオ・ポンティの世界─」展で見た、ポンティがデッツア通りの自邸アパートでインタビューを受ける映像を見て、それが確信に変わった。

ポンティはそのアパートのつくりに関して、仕切り壁を排してアコーディオンカーテンでフレキシブルな空間づくりをしたことで、空間の可能性の広がりと、建築コストが押さえられたことを力説。
そして最後に、チェ・ゲバラの「品質は庶民への敬意だ」という言葉を引き、庶民は低価格でも安物でない、こういう“新しい質の高さ”を享受すべきだと語っていた。

皆川明が抱く「将来の夢」のかたちのひとつの具現化を見たことが、展覧会の一番の収穫だった。

1995年のスタート時から、ミナ ペルホネンのテキスタイルにはすべて名前がつけられている。左のジャケットは「knoll」(2020 ss)、ブラウスは「memoria」(2019ss)、スカートは「sulka」(2019-20aw)。中央のワンピースは「full moon」(2008 ss)、右のワンピースは「riviere」(2017ss)
鮮やかな色のコートは「pot-au-feu」(2015-16 aw)、ブルー系のジャケットとスカートは「pot-au-feu」(2016-17aw)
総勢15人のモデルが揃うショーのフィナーレ

11月25日には東京都現代美術館のエントランスホールを80mのランウエイにしてショーが行われた。
タイトルは「minä perhonen 1995-2020→ SS/AW COLLECTION “TIME・ME・IT”」
来年には25周年を迎えるミナ ペルホネンの膨大な服のアーカイブをミックス・コーディネートしたものだ。
スタイリングとディレクションは、2005年のパリの初ショーの時にもスタイリングを手掛けた大森伃佑子によるもの。
つくられた年代もシーズンも違う服という難しい条件で 約50ルックのコーディネートを繰り広げたショーは、カオスになりがちだがなぜか調和がとれている。それはミナ ペルホネンが確立したあるスタイルをよく理解したスタイリングだったからに違いない。

20年近く前に出会ったミナ ペルホネンの萌芽の進化の過程を追う愉しみはこれくらいにして、12月には、また次の新しい才能=それも十代の少年の成長を見届けるという幸運も控えている。


<関連情報>

□ミナ ペルホネン/皆川明 つづく
「つづく」は、継続性だけでなく、つながる・連なる・手を組む・循環するなどモノや人が連鎖しながら何かを生み出すエネルギーを想起させることばとして展覧会のタイトルにしたという。それをポスターやフライヤーなどのグラフィック・デザインにしたのは葛西薫。
展覧会図録も葛西氏の手によって制作中。8種の限定カバー版は会場で予約受付。
通常版カバーの図録は美術館で2020年1月2日より発売。
価格3700円+税
https://mina-tsuzuku.jp/catalogue/

東京都現代美術館にて/2019年11月16日~2020年2月16日
https://mina-tsuzuku.jp

□ミナ ペルホネンの本 ripples
NYの出版社Rizzoli社から10月に出版されたビジュアルブック。
レーモン・クノーの「文体練習」のような自由な文字組にまず驚かされる。
ミナ ペルホネンのもの作りの核となることばが、詩画集のようにちりばめられている。
アートディレクションとデザインはサイトヲヒデユキ。
https://www.mina-perhonen.jp/life/book/b012/

□尾形凌 個展 月下老人
暁斎か蕭白を彷彿とさせるその才気。高校3年生、18歳の尾形凌2回目の個展が芝の日蓮宗 松流山 正伝寺で開催される。前回は三田の居酒屋で「おじさんin居酒屋」展を開催。今回は「老い」をテーマに制作。今、最も注目すべき才能。会期は1週間なので見逃さないように。
正伝寺にて/2019年12月16日~12月22日
https://ryo-ogata.jimdosite.com/news/

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2019/11/30

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