メイン画像
TOKYO BUCKET LIST. 都市の愉しみ方 お菓子から建築、アートまで歩いて探す愉しみいろいろ。

第1回:赤煉瓦とドーム

Profile
関 直子 Naoko Seki
東京育ち、東京在住。武蔵野美術大学卒業後、女性誌編集者を経てその後編集長を務める。現在は気になる建築やアート、展覧会などがあると国内外を問わず出かけることにしている。


東京駅には愛してやまない場所が2箇所ある。「東京ステーションギャラリー」と、「TORAYA TOKYO」。

どちらも、辰野金吾によって建てられた1914年当時の駅舎の煉瓦の壁面を目の当たりにできる場所だ。1988年に開館した「東京ステーションギャラリー」は、開館当初から「東京駅と煉瓦」を手始めに、植田正治、バルテュス、桑原甲子雄、マン・レイ、ジョサイア・コンドル、有元利夫、香月泰男、前川國男展などなど……を開催、このラインナップから目が離せるわけがない。2012年の復原工事後のここ何年かでも、鴨居玲、ジョルジョ・モランディ、メスキータ、岸田劉生など、他の美術館が見落としていたような、そして鮮烈に記憶に刻印されるような企画が目白押しだ。

3階のホワイト・キューブから八角塔内部の廻り階段を降りて2階の展示室へ移動すると、煉瓦の壁面に囲まれたスペースが現れる。もうそこは特別な空気に満たされていて、ここでアートに出会える幸せに感謝せずにはいられなくなる。

北ドームに隣接したギャラリーを出たら、次に向かうのは東京ステーション・ホテルの2階、もうひとつの再建されたドーム=南ドームの吹き抜けを囲む位置にある「TORAYA TOKYO」。既存の煉瓦の壁面をそのまま露出させたスペースを設計したのは内藤廣。窓に向いたカウンターで外を眺めながら過ごすのもいいけれど、細長い店のほぼ中央に位置する煉瓦の壁に掛けられたフィリップ・ワイズベッカーの描いたモノクロの東京駅駅舎の絵の正面の席に窓を背に座るのが一番の贅沢。ちなみにワイズベッカーを起用したアートディレクターは葛西薫。おすすめは、TORAYA TOKYO限定の「TOKYOプレート」。

『TOKYOプレート』 販売期間:通年 価格:1100円(税込)
※数に限りがあります

「夜の梅」「ポワールキャラメル羊羹」「あずきとカカオのフォンダン」が一度に楽しめる虎屋の”羊羹アソート”ともいうべき一皿。この店は人気があって、ウエイティング・リストに名前を書いてしばし店外で待たなければならないし、その”特等席”が空いているとは限らない。

そんな時は、今年の6月にオープンしたばかりの「HIGASHIYA man 丸の内」へ。ここは日本工業倶楽部会館を取り囲むように建てた高層ビルの一階にある。白い暖簾の奥に緒方慎一郎の美意識に貫かれた空間が現れ、そこでは和菓子やお茶、うつわなどを選ぶことができる。さらに奥にはカウンター形式の茶房がしつらえられていて、和のアフタヌンティー・スタンドで供される”茶間食”の趣向はなかなかだ。

次は二つの丸ビルを通り越して、吉田鉄郎が設計した旧東京中央郵便局「KITTE」へ。取り壊される寸前に外壁と建物の一部が残されることになった郵便局舎内の2階3階には、不思議な空間がある。「インターメディアテク」だ。
ここでは東京大学が明治時代から蓄積してきた学術標本を常設展示。2002年に東京大学総合研究博物館・小石川分館で開催されたマーク・ダイオンの「驚異の部屋」展でのコンセプトがそのまま発展したようなところだ。内装のデザインには緒方慎一郎が関わっている。

画像提供:SUN-AD

葛西薫氏の名作、サントリーの80年代の広告「アイ ラブ ユー」。背景にぼやけて見えるのは、煉瓦造りの駅舎 東京駅。
広告界、照明界の二人の巨匠、葛西薫 面出薫=W薫氏は、ある対談で東京駅についてこんな風に言及していたことがある。

「昼と夕暮れのあいだ(午後 3 時くらい)の光。それまでの僕は写真のなかに写るかたちばかりを考えていたのですが、この時の写真は被写体を包んでいるもの——柔らかさ、奥行き、暖かさ、冬の空気が感じられた」。

その後のものづくりの転換点となった広告だと、葛西さんは語っていた。

照明デザイン:株式会社 ライティング プランナーズ アソシエーツ
撮影:金子俊男

こちらは照明デザイナー面出薫氏の手になる東京駅のライトアップ。
面出さんは「辰野金吾さんが設計した歴史的建造物を穢さないよう、和やかな風景をきちんとつくることだけを考えた」と話されていた。

丸の内周辺には歴史的建造物の外壁や建物を残し高層部を併設したビルがいろいろある。これはfacadism (日本では腰巻建築)と呼ばれているらしい。東京駅はそのたぐいの建築群とは一線を画した緻密な復原の計画によって復活した奇跡的な建築だ。11月24日まで「東京ステーションギャラリー」で開催されている「辰野金吾と美術のはなし 没後100年特別小企画展」の最後のコーナーは、現存する創建時の東京駅のありとあらゆる青図が展示されている。青地に白い線で繊細に浮き上がる東京駅の立面図は、めったにお目にかかれない美しさだ。

辰野葛西建築事務所《中央停車場建物建築図北立面図》1910(明治43)年頃 鉄道博物館蔵

関連情報

□「辰野金吾と美術のはなし 没後100年特別小企画展」
東京ステーションギャラリーにて/2019年11月2日~24日
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

□「没後90年記念岸田劉生展」(巡回展)
山口県立美術館にて/2019年11月2日~12月22日
名古屋市美術館にて/2020年1月8日~3月1日

□虎屋文庫『ようかん』 新潮社 刊
A5判 160頁(うちカラー48頁) 2420円(税込)
https://www.shinchosha.co.jp/book/352951/

□再開御礼!「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」展
虎屋 赤坂ギャラリー にて/2019年11月1日~12月10日
羊羹のなりたち、文豪たちの残した羊羹にまつわる名文などなどを綴った虎屋文庫による書籍「ようかん」と連動していて見応えがある。特に谷崎潤一郎の「陰影礼讃」にある、ほのかな光の中での羊羹の姿の記述をそのままに具現化した展示は必見!
https://www.toraya-group.co.jp/toraya/bunko/reference-exhibition/79/

□HIGASHIYA man 丸の内
https://www.higashiya.com/shop/man_marunouchi/

□インターメディアテク
https://www.intermediatheque.jp

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

2019/11/15

  • イメージエリア

  • テキストエリア

    CLASKA ONLINE SHOP

    暮らしに映えるアイテムを集めた
    ライフスタイルショップ

    CLASKA ONLINE SHOP