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ホンマタカシ 東京と私 TOKYO AND ME (intimate)

Vol.3 ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
PLACE/東京国際フォーラムのアトリウム(東京都千代田区)

写真:ホンマタカシ 文:加藤孝司 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Sounds of Tokyo 03. (Peter Barakan at CLASKA Restaurant “kiokuh”)


生まれ育ったロンドンから東京に来たのが、1974年でした。当時、音楽の著作権関係の仕事をするために来日したんです。

その頃の東京は当然ながら今とはかなり違っていて、バブルの前なので古い建物がたくさん残っていましたし、物価も今よりだいぶ安かった。バブル期以降の“工業デザイン先進国”という面影は、ほとんどなかったですね。

そんな東京がすごく変わったと思ったのが1980年前後。ソニーの「ウォークマン」が発売されたのが1979年ですが、音楽も建築もデザインも、カッコいいと思うものが出てきたな、と思ったことを覚えています。

というわけで……東京で暮らしはじめてもう45年になります。

でも、やっぱり行動圏は仕事で決まるから、東京の中心部に暮らしていると北や東のエリアへは時々遊びに行くことはあっても、“知っている”と言える程ではないですね。

日本に来てすぐの頃に吉祥寺で3年間暮らしたことがあったのですが、思えば今は東京の西の方にもさほど行くことがありません。だから、僕の知っている「東京」は、とても限定されているのだと思います。

かつて仕事でよく足を運んだ有楽町にある、「東京国際フォーラム」のアトリウムへは、今でもたまに出かけます。

東京はごちゃごちゃとしたスペースが多くて、建物も天井が低いところが多いから、少し窮屈に感じる。その点、東京国際フォーラムのアトリウムは抜けがよくて、はじめて見た時には驚きました。「うわぁー!」って。

今の東京に、あれだけ“無駄”あるいは“余裕”のある空間を持った建物は、たぶん他にないんじゃないかな。
ガランとしていて、人通りが全くないわけじゃないけど静寂があって、日中あの場所にいくと不思議と落ち着くんですよね。

1990年代に、4人の執筆者で「朝日新聞」に毎月新作のレコード評を書いていた時期がありました。
当時、その連載の集まりが有楽町駅近くにあるビアレストランで毎月開かれて、ご飯を食べながら打ち合わせをしていました。その頃に寄ることもありましたね。
それと、買い物で銀座に行った時など、ふと時間が空いた時にアトリウムのベンチに座って新聞や本を読みながらぼーっとするのも好きでした。とても気分が良かったな。

最近は銀座方面に行く機会も少なくなりましたが、今でも思い出した時にたまに足を運んだり、待ち合わせに使うこともあります。

約束をした時に相手を待たせるのが嫌いだから、いつも余裕をもって行動をしていて、30分前に約束の場所に着いちゃうなんてこともあります。
それもあって、出かける時には本や雑誌、新聞など、読むものを必ず持っていくんですね。

そうするとそれを読む場所が必要になるんだけど、そのたびに喫茶店に入ってコーヒーを飲むのもなんだから、ただ座って読書が出来る場所があると便利なわけです。
暖かい季節だったら外でもいいし、そうじゃなかったら室内がいい。そういった意味でも、東京国際フォーラムは絶好の場所です(笑)。

かつて東京との関係について聞かれたことがあって、その時には「“住めば都”と“くされ縁”の中間」と答えました。長年住んでいますが、実は東京という街が特段好きということでもないんです。

最初に東京に来た時に街並みを見て、正直“美しい”とは思いませんでした。
先進国でこれだけ電柱が地上に出ている都市は珍しいし、歴史がある美しい建物もすぐ壊してしまうし、自由さという点ではいいんだろうけど、今でも景観を考えた都市計画がされていないんじゃないかな、とすら思います。

と言いつつ……暮らすのに、東京以外の場所を考えたことはありません。

生まれ故郷のロンドンも同じで、東京よりは古くて美しい建物が残ってはいるけれど、いい建築家がいるにも関わらず、新しく建てられるのは酷い現代建築が多いです。
だからさっきの“くされ縁”じゃないけど、仮にロンドンにそのまま住んでいたとしても、きっと僕は同じことを言っているんだと思いますよ(笑)。


ピーター・バラカン Peter Barakan

1951年ロンドン生まれ、ロンドン大学日本語学科卒業。1974年来日、音楽出版社の著作権業務を経て、YMOのスタッフに。現在はラジオの音楽番組を中心に活動。また音楽フェス、Live Magicのキュレイターも務める。

東京と私

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2020/01/30

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