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短期集中連載
堀井和子さんと一緒につくる、
大人が毎日着たい服
第2回

今年の4月初旬に、堀井和子さんと「CLASKA Gallery & Shop "DO"」が一緒につくる新たなアパレルライン「sept septième(セット・セッティエーム)」がスタートします。
制作の背景や堀井さんが服づくりに込めた思いをご紹介する短期集中連載。
連載第2回は、ゲストに堀井さんの著作のデザインを多数手がけてきたエディトリアルデザイナー・若山嘉代子さんをお迎えした対談の後編をお届けします。

写真:山平敦史 文・編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

前編はこちら


連載第2回
「“大人のおしゃれ”について、考えてみた」/後編
堀井和子さん×若山嘉代子さん(L’espace代表)

Profile
堀井和子(ほりい・かずこ)/右
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop “DO”と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。

Profile
若山嘉代子(わかやま・かよこ)/左
1953年東京生まれ。エディトリアルデザイナー。「有限会社レスパース」代表。堀井和子さんをはじめ、原由美子さん、有元葉子さん、平松洋子さん、伊藤まさこさんなど数多くの著作のデザインを手掛ける。書籍、雑誌など出版物のデザインを中心に、カタログ、ショップのパッケージ、広報誌、CDなど制作物まで幅広いジャンルのデザインに関わっている。
http://www.lespace.jp/index.html


大人にふさわしい服って?

対談の前半で、堀井さんがご自身の体形をうまく生かすサイズやデザイン選びについてお話されていましたが、若山さんは、洋服を選ぶ時の「これを選べば失敗しない」といったマイルールはお持ちですか?

若山:
マイルールという程のことではないのですが、先ほど堀井さんが、「洗濯を繰り返すうちにだらしない感じになってきてしまったものは潔く手放しています」とおっしゃったことに、すごく共感しましたね。若い頃は、多少ヨレっとしたものを着ていても気にならなかったのが、年齢を重ねる程にそういうものを無造作に着ることが難しくなってきた。「だらしなく見えないかな?」ということは、常に気にしています。
堀井:
ほんと、大切ですよね。
若山:
サイズ感でいうと私は堀井さんとは逆で、シャツなどは小さめのものを選ぶことが多いです。少し前に、金沢にある「金港堂」というメンズシャツの店でシャツをオーダーしたのですが、サイズはもちろん、襟のかたちやボタンとボタンの間の長さなど細かい相談をしながらつくってもらったら、本当に身体にぴったりで着ていて気持ちよくて……。シャツって面白いなぁって。

素敵ですね。

若山:
この経験を経て、“自分にはこれくらいの丈が似合うんだな”とか、“ボタンをこの辺まで開けるとバランス良く見えるな”ということがわかったんです。

今日も、セーターの下にシャツを着られていますね。

若山:
はい。取材なので、きちんと感を出せたらと。私、この年になってようやく「ドレスコード」や「TPO」を気にするようになったんです。ここ数年、原由美子さん(日本におけるスタイリストの草分け的存在)とお仕事をさせていただくことが多くて、ご一緒していると自然とドレスコードの話になるんです。「打ち合わせに行く時は、襟があるものを着ていったほうがいいのよ」とか。これまで……そんなことを考えたこともなかったから(笑)。
堀井:
あはは(笑)。
若山:
基本的に、日々自分の好きなものを着ていたんですけど、「今日は誰と会うんだっけ?」、「どこに行くんだっけ?」などを考えながら、服を選ぶようになりました。

堀井さんはいかがですか?

堀井:
スタイリストの仕事をしていた頃から、きちんとした服を着なければならない場面が少なかったんです。撮影も、だいたい自宅でしていましたし……。仕事柄良く歩くし、荷物も多いから、自然とスニーカーに合うファッションが多くなって。今もその延長で、自分が好きで着心地がいい服を着ていますね。若山さんは、クライアントの職種などによっては、いわゆる“ジャケット着用が望ましい”タイプの打ち合わせや撮影の現場もあったりしますよね?
若山:
そうですね。今更ですけど、最近ジャケットが必要だなと思うようになりました。「いまの私が着て違和感がないジャケットって、どんなデザインだろう?」って色々探しています。年齢が年齢なので、“ジャケットに着られる”のも恥ずかしいから(笑)。ニットのジャケットやカーディガンだったら自分としても無理なく着れるな、とか……。あと、今日持ってきたこのコートもジャケット替わりに羽織ったりしていますね。
若山さんの姪御さんがデザイナーを務めているブランド「nooy(ヌーイ)」の定番「ショールコート」
堀井:
わぁ、素敵。
若山:
少し袖が短めで可愛いんですよね。とても気に入っていて、素材違い・色違いでいくつか持っているんです。

コートとのことですけど、生地の質感的にジャケットとして着ても違和感ないですね。

こちらも「nooy」のコート。よりカジュアル感が強いデザイン
若山:
そうなんですよね。あと一着、このコートも姪のデザインなのですが、薬剤師さんが羽織っているジャケットみたいで可愛くて。
堀井:
先ほどの物とはタイプが違うけど、どちらも若山さんっぽい。
若山:
仕事の打ち合わせなどでも、相手の方の職業などに合わせてその場にふさわしい格好をしていると、安心感が生まれてコミュニケーションが楽な気もして。目指すは、TPOは気にしつつも「自分らしさ」を失わない着こなし。それができるのが、本当に“おしゃれな人”だと思います。

“自分らしいもの”との出会いかた

「自分らしさ」って、ファッションの話をする時によく出てくるキーワードですけど、実際に自分らしさを着こなしに反映するのって決して簡単ではない気がします。堀井さんが今回の対談企画のお相手に若山さんを推薦してくださった際、「ブランド物のバッグとかにはあまり興味がないけど、若山さんが持っていると、とても素敵に見えて欲しくなってしまう」ということをおっしゃっていたのですが、きっと若山さんが「自分らしさ」として、うまく着こなしに取り入れているからなのではないでしょうか。

堀井:
ファッションの仕事をしている友人や知人もいますけど、本当におしゃれだなと思うのは、若山さんみたいな方なんですよね。流行を超越しているというか……トレンドと自分の感覚の両方を併せ持つお手本、みたいな。若山さん、小物使いもとてもお上手ですよね。
若山:
洋服はベーシックな色味が多いのですが、小物は結構色で遊ぶかもしれませんね。スカーフはとても好きで、靴下もカラフルなものが大好き。
堀井:
バッグもいろいろお持ちですよね。光る素材のものとか。普段あまり“欲しいな”と思わないタイプのものでも、若山さんが持っていると欲しくなるのが不思議で(笑)。
若山:
嬉しいな(笑)。
若山さんがこの日着ていたセーターは「ドリス・ヴァン・ノッテン」。襟ぐりのデザインが気に入って、色違いで購入したそう

自分自身の体形を知ることも大切ですが、「自分らしいもの」あるいは「自分を素敵に見せてくれる」色やかたちを知ることができると、洋服選びもより楽しくなりそうですね。

若山:
そうですね。「これは私に合う!」と思えるものに出会ったら、色違いで買うことも多いです。今日着ているセーターもそうですし、あと、このカットソーも。
「rag & bone」で購入したカットソー(若山さん私物)
堀井:
あ、素敵。
若山:
「rag & bone」というブランドの定番品なんですけど、ストレッチが効いていて、細からず太がらずのちょうどいいバランスが気に入っています。私、手が少し長めなんですけど、袖丈もぴったり。あと、襟ぐりのかたちが私に合っているのも嬉しくて、色違いで購入しました。これ1枚で着ることもありますし、カーディガンの下に重ねるなどインナーとしても活躍しています。
堀井:
襟のステッチも良い感じ。自分に合うサイズを見つけると、嬉しくなりますよね。
若山:
そうなんです。若い時はこういう買い物の仕方はしなかったけれど、パンツもかたちが気に入ると素材違い、色違いで買っちゃいますね。

堀井さんはいかがですか? 色違いで買ったり、繰り返し買うアイテムってありますか?

堀井:
好きで集めているのはTシャツでしょうか。今日はいくつか持ってきてみたんですけど……。
「コカ・コーラ」のロゴがプリントされたTシャツと、メンズサイズの白いTシャツ(堀井さん私物)
若山:
堀井さんらしいアイテムですね。
堀井:
自分が持っている洋服の中で、Tシャツの数が一番多いかもしれません。私、“文字”が好きなので、ロゴがかっこよかったりするとついつい買ってしまうんですよね。コカ・コーラのロゴが入ったものはレディスサイズで、あと一つのほうはメンズ。結構サイズが大きいんですけど、肩幅があるおかげでいい感じに着こなせるんです。

おしゃれへのモチベーション

少し話が逸れてしまいますが、お二人は年を重ねる中で、「自分が着たい服がわからなくった」といったような“おしゃれ過渡期”のような時期ってありましたか? たとえばメイクや髪型って、若い頃と同じスタイルを続けていると、ある日突然自分が違和感を感じる瞬間が訪れるという声をよく聞くのですが……。

若山:
対談の前半でお話した「細身の黒いパンツが合わなくなってきた」と感じた時は、ひとつの過渡期だったのかもしれませんね。もしかしたら、まさに今、過渡期真っ最中なのかも(笑)。カジュアルで似合っていればいい、という年頃じゃなくなってきたから……。

洋服に対するモチベーションを保つこと、わくわく感を失わないことって、結構難しいことなのかなって思いますよね。油断すると「安い」とか「楽ちん」とか合理性に寄った服選びをしてしまいそうで……。

堀井:
食器とかもそうですけど、「もの」って、“すごく好きだな”とか、“大事だな”と思えるディティールがあると自然と大切にするし、そういうものに触れると嬉しくなるじゃないですか。服も、「便利だから着てる」というクールな関係性になることもあるかもしれないけど、身に着けてあたたかい気持ちになるものを選んでいきたいし、着ていきたいなと思いますね。

モチベーションを保つということでいうと、何か新しい挑戦をされたりすることもあるのでしょうか。

若山:
挑戦というほど大げさなものではないのですが、最近、オレンジと黒の水玉模様のシルクのシャツを買ったんです。
ドット柄のシルクシャツ。顔写りが良く、周りに評判だそう
堀井:
綺麗な色! いいですね。
若山:
これを着ていると、「若山さん、そういう色着るんだ!」と驚かれつつも「似合う!」と褒めてもらえることが多くて。シルクって着ていて気持ちがあがるし、自分も新鮮な気持ちになるし。買ってみてよかったなって。なにより、褒めてもらえると元気になるし(笑)。セールでたまたま目に入って買ったんですけど、堀井さんもおっしゃっていたとおり、セールは冒険をするチャンスですよね。

改めて、お二人にとって「おしゃれ」って何ですか?

堀井:
「元気になるおまじない」みたいなものだな、って思います。年齢を重ねるにつれ、どうしても姿勢が悪くなってきたり、“抗えない部分”って出てくるじゃないですか。でも、洋服を身に着けることで元気になったり、嬉しい気持ちになったり。コンプレックスが長所に感じられたり。
若山:
そうですね。やっぱり「元気になるもの」ですよね。あるいは、自分の好きなものに出会える楽しさを感じさせてくれるもの、かな。
堀井:
年齢を重ねたことで、おしゃれに対してより自由になれました。「好きなもの、着ていて居心地いいものを選ぼう」って。失敗も重ねてきたから自分に似合うものがわかっているし、コツもつかめたしね。自分の“好き”をちゃんと選べる年齢になったのかな、って。目指すは、「自分を知っている人、自分らしい色やかたちを身に着けている人」ですね。若山さんみたいに。
若山:
嬉しい(笑)。やっぱり究極におしゃれな人は、白いシャツにジーンズが似合う人かな?
堀井:
ジェーン・バーキンみたいにね。そのためには、身体も鍛えないとね(笑)。

現在、4月の発売に向けて堀井さんと一緒につくっている服は、「大人に似合うカジュアル」がテーマですね。

堀井:
年を重ねた時にカッコよく見える服がなかなか売っていないなぁと思っていて。私はおしゃれには疎いけれど、「自分が好きなもの、着たいもの」のイメージははっきりしているから、それがかたちになったら、と思っています。今日お話ししたような身に着けることで“嬉しいな”と感じていただける、毎日でも着たくなるような服をお届けできたら。
若山:
出来上がりを楽しみにしています! どんなアイテムをつくるんですか?
堀井:
パンツとかシャツとか、ワンピースとか……日常着ですね。「sept septième(セット・セッティエーム)」というブランド名は「7/7」という意味のフランス語なのですが、“一週間のうち毎日でも着たくなる服”という思いを込めて。楽しみにしていてください!

連載第3回へ続く

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2020/03/14

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