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堀井和子さんの「いいもの」のファイル

第70回:バターのパッケージ/マドレーヌの木箱/マルシェのチーズの箱

文・写真:堀井和子

パッケージ

昔、フランス旅行の帰りに空港で買い求めた、バター500g入りのパッケージ。

 直径12cm 高さ10cm。上部に赤で CELLES s/BELLE とプリントされています。

エシレ

ÉCHIRÉのバター250gのパッケージ。

  白木の状態がとても綺麗で捨てることができなかったので、30年近くたってこのくらいの数に。
 ポプラの材を薄く削ったものを組んで、ホッチキスで留めたデザインがカッコいい。

 ポプラの材は白色で柔らかく燃えやすいため、マッチの軸木や包装用に使われるそうですが、日本ではあまり利用されないようです。

 日本では、杉やヒノキ、松など天然の木材を薄く削り出した経木を、菓子や味噌、魚などの食品包装に使っていました。
 「日本の伝統パッケージ」の本で紹介されている徳島県小男鹿本舗冨士屋の”あられ三盆”は、経木による曲げ物のパッケージで、見るたびに凛とした様子に心が動きます。

 経木について調べていたら、別の呼びかたが記されていました。
 へぎ(折、片木、剥) 枇木 —— 様々な木や材にまつわる日本の言葉、文字の美しさにもドキドキしました。

 バターを入れた木のバケツはホッチキスで留めた簡単な造りですが、軽快で何気ないけれど美しいなぁと思って、大事にしています。

 ふと、朝食限定のカフェで、自家製のパン2人分だったら直径12cmの方、1人分だったら直径10cmの方に入れてサーヴしたらなどと考えて楽しくなることも。

 バターやパンには、この素直な質感がよく合います。
 ”霰三盆”のパッケージくらい精巧に作ったものがよいかというと、何気なさが違うように思うのです。
 年月を経ても白い木の表情を保って清々しく見えますが、バターを多く配合したクロワッサンなどは入れたくなかったりで、扱いには気を使っているかもしれません。

 すごく気に入った質感、フォルム、雰囲気なのに実用的ではない —— こんなふうないいものが、家にはいくつもあります。

パッケージ

MADELEINES DE COMMERCY のパッケージ。

 直径27cm 短径13.5cm 高さ10cm

 1992年に東京で買いましたが、マドレーヌの味は覚えていません。
 やはりこの楕円形の木のパッケージに強く魅かれて、選んだと思います。

 エシレの木のバケツよりしっかり丁寧に作られていて、ホッチキス、留金も目立たないように配慮してあります。
 使われている木は幾分赤みがかった温かい色で、経年変化でさらに落ち着いたニュアンスに。

 形はシェーカーボックスに似ていて、あくまでもパッケージという造りですが、私はこのマドレーヌの木箱が好きです。
 シェーカーボックスは昔買って、その後手離せたけれど、エシレやマドレーヌの木のパッケージは手離せないでいます。

パン切ナイフ

フランスの南西部のマルシェで、ロカマドゥールという山羊のチーズが並べられていた経木の箱。

 白い木の表情と隙間のある構造が素敵です。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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2023/02/28

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