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堀井和子さんの「いいもの」のファイル

第35回:ステンレスのトング/四万十ポークの缶詰/ガラス製品

文・写真:堀井和子

ステンレスのトング

 青山の桃林堂で開かれていた「夏のてしごと展」で、長さが18cmのトングを買いました。片手で握るのに、ちょうどよいサイズ、バネの力の具合です。

 湯浅記央のりおさんの作品で、マットな銀色の表面は使いこんだアルミのように見えますが、実はステンレス製。湯浅さんはカトラリー制作で真ちゅう・錫・アルミなど様々な素材を使ってきて、「味や匂いなど、食事の中で感じる様々な感覚」を最も損なわず使える素材がステンレスということで、ステンレスから金属の自然な表情を引き出す技法を見つけたのだそうです。

ステンレスのトング

 確かに我家で30年以上使っている北欧のステンレスのトレーなどは細かい傷がついて、ものすごく優しい表情になっていますが、新しいステンレスのキッチン道具は暗めの銀色、ピカピカの光り具合がハードな印象です。

 ステンレスを加工して、こんな表情の道具を作るなんて、面白いことを考えるなぁと思いました。

 ただ、初めからぐっと間合を縮めてくる馴染んだ表情に、ほんの少しだけ戸惑いも・・・。

四万十ポークの缶詰

 パッケージの紙箱のデザインがかわいい缶詰を見つけました。
 高知県の黒瀬町缶詰製造所の四万十ポークのネギ塩タレ、塩胡椒焼き、四万十ポークとゴボウの甘辛煮です。

 早速味わってみましたが、ゴボウとの甘辛煮はそのまま御飯にのせて食べたい、懐かしくて力強い常備菜タイプ。塩胡椒焼きは、どちらかというとポークのリエットみたいな、オードヴル向きの一品タイプ。四万十ポークが味わい深いのでシンプルに、冷やした白ワインとバゲット、オリーブの実を添えて楽しみたいです。料理に使って熱々にしてもおいしそうですが・・・。

ガラス製品とイチジク

 1丁目ほりい事務所を設立して初期の頃に作ったガラス製品のシリーズ。
 "Après des vacances" や "iii+ka" の文字を入れた長方形や、L字ボード、ドーナッツ形、クロス形。

 ブリーチーズやいちじくは、切り分けてからサーヴするのがおすすめです。
 切り分ける時はそっと。すごく実用的ではないかもしれませんが、テーブルの上がワクワクしてくるアイテムを目ざしました。
 その時にしか作れない手仕事のものってあるんですね。このシリーズを手がけてくださった職人さんのいる工場は廃業したと伺いました。

 今、こうして見つめると、贅沢でおっとりしたガラス製品が微笑んでいるように感じます。


Profile
堀井和子 Kazuko Horii
1954年東京生まれ。料理スタイリスト・粉料理研究家として、レシピ本や自宅のインテリアや雑貨などをテーマにした書籍や旅のエッセイなどを多数出版。2010年から「1丁目ほりい事務所」名義でものづくりに取り組み、CLASKA Gallery & Shop "DO" と共同で企画展の開催やオリジナル商品のデザイン制作も行う。
CLASKA ONLINE SHOP でのこれまでの連載 > 堀井和子さんの「いいもの、みつけました!」


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2021/09/07

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