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つくる人 私たちの暮らしを豊かにする「もの」を生み出す「つくる人」とのトークセッション。

Vol.13 POSTALCO(マイク・エーブルソン&エーブルソン友理)
いま、私たちに必要なものは/前編

いまから20年前、マイク・エーブルソンさんがパートナーの友理さんのためにつくった
書類ケースからはじまったものづくりの歴史。
ポスタルコが生み出すプロダクトは、性別や年齢そして時代をも超えて
私たちの暮らしの中で美しく歳を重ねていく。

写真:HAL KUZUYA 文・編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

POSTALCO(マイク・エーブルソン&エーブルソン友理)インタビュー記事写真
POSTALCO(マイク・エーブルソン&エーブルソン友理)インタビュー記事写真
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Profile

POSTALCO(ポスタルコ)
マイク・エーブルソンとエーブルソン友理が2000年にNYで共同創業したブランド。性別、年齢、国籍を問わずに愛されるプロダクトの数々は、控えめでありながら実用性に優れ、温もりと普遍性を纏う。日々の暮らしに日本のものづくりの技術を活かせる途を見つけ出すことをテーマに、商品開発を行なっている。
2021年2月18日よりCLASKA Gallery & Shop "DO" 各店にて「POSTALCO fair 2021 SS」を順次開催。詳細は文末に。
HP:https://postalco.com/
Instagram:@postalco.tokyo

マイク・エーブルソン
カリフォルニア州・ロサンゼルス生まれ。1997年にNYへ移り、ジャック・スペードのコンセプトづくりとプロダクトデザインに携わる。ポスタルコのプロダクトデザインだけでなく、カルダー財団、サンスペル、イッセイ・ミヤケ、三菱鉛筆、メゾンエルメスなど、さまざまなクライアントとの仕事をしている。

エーブルソン友理
東京生まれ。ロサンゼルスとスイスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインでグラフィックデザインを学ぶ。NYでブランディングの仕事を経て、2000年にマイク・エーブルソンとポスタルコを共同創業。ポスタルコのコミニュケーションデザインを主に担当している。

小さな小さなものづくりのはじまり

昨年、POSTALCO(以下、ポスタルコ)は20周年を迎えられたそうですね。私たちCLASKAとポスタルコのご縁がはじまってからずいぶんと時間が経ったんだなぁと、しみじみしてしまいました。商品の取り扱いをさせていただくことにはじまり展覧会の開催、そして2018年にはPOSTALCO DESIGN STUDIOとして「Hotel CLASKA」の客室(老朽化に伴い2020年12月に閉館)も手掛けていただいて。

友理さん(※以下敬称略):
早いものですよね。自分たちもピンと来ていないところがあります。
マイクさん(※以下敬称略):
展覧会は8周年の時だったかな。大熊さん(CLASKA Gallery & Shop "DO"のディレクター 大熊健郎)が「記念に何か展示でもやろうよ」と提案してくれたんです。「まだ早いんじゃない?」って言ったら、大熊さんが「いいんじゃないの?」って言ってくれたんだよね。
POSTALCO(マイク・エーブルソン&エーブルソン友理)インタビュー記事写真

いまから20年前、マイクさんが友理さんのためにつくった書類ケースからポスタルコの歴史がはじまりました。バッグや革小物、紙製品、ウエア類、そして椅子のデザインなど、商品の幅もどんどん広がっていますね。いちファンとしてますます興味が尽きないんですけれども、今回は改めてポスタルコのものづくりについてお伺いしたいと思っています。

友理:
よろしくお願いします。

遡ること20年前、お二人はNYにいらっしゃったんですよね。

マイク:
そうですね。友理はグラフィックデザイナーで、僕はプロダクトデザイナー。別々の仕事をしていて、まだ結婚もしていなかったね。最初は「こういうものがあったらいいな」と思うものや自分たちにとって身近なものを一緒につくってみようか、という感じからはじまったんです。
友理:
いまでは当たり前になっているオンラインショップやSNSも当時はなくて、個人で世界に発信したり商品を売ったりっていうことが簡単には出来なかったから、すごく静かなスタートでしたね。誰かに「私たちはこういうことをやっています」ということを言えないくらいの、小さな小さな規模で。
POSTALCO(マイク・エーブルソン&エーブルソン友理)インタビュー記事写真
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「こんなブランドにしていきたい」という具体的なコンセプトはあったんですか?

マイク:
革ものも紙ものも、幅広く色々なものをつくっていきたいと思っていました。いまは情報化社会だから、「何かつくりたい!」と思った時にどうやったら実現できるか簡単に調べられるでしょう? 当時はそういう環境ではなかったけど、僕たちにとってはそれが良かった気がします。いまの時代は“可能性の罠”みたいなものが存在するから。

可能性の罠?

マイク:
ある意味やろうと思ったら何でも可能だから、「全部やりたい!」ってなっちゃう。制限されているからこそ自分たちの進む方向がはっきり見えた、という側面はあったと思うんですよ。本当に「自分たちにできることしかできない」という感じだったからね。

なるほど。

マイク:
友理が印刷物の仕事をやっていたから「じゃあ何かおもしろい印刷物をつくろうか」とか、僕は鞄のデザインをしていたから「鞄とか財布をつくってみようか」とかね。それしかなかったから、進みやすかった。いまでもその延長線上にいる気がしています。

“ワクワク”を届ける

「ポスタルコ」という名前はどのような経緯で決まったんですか?

マイク:
友理が考えたんだよね。
友理:
その頃は、マイクと顔を合わせるたびに“どんな名前にしようか”と話し合っていました。郵便物や切手のデザイン、消印、紙のもつあたたかみにインスピレーションを受けました。
マイク:
郵便物が届くのって、嬉しいじゃないですか。そもそも「郵便局」というものがとても興味深い。ものをつくることが仕事ではなくて、届ける仕事でしょ。そのワクワク感だったり誰かに喜んでもらえる感じがいいなって。
友理:
「Postal(ポスタル)」という言葉は世界共通というか、わりとどこの国でも理解してもらえるんですよね。
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マイクさんがいつも大量の書類を持ち歩く友理さんのためにつくった書類ケースは「リーガルエンベロープ」という名でブランドを象徴するロングセラーアイテムに成長しました。ポスタルコの製品第1号、ということになりますか?

マイク:
商品にするつもりでつくったわけじゃないんだけどね(笑)。僕自身、いまはほとんどPCを持ち運ぶケースとして使っています。当時のPCは大きくて入らなかったけど、いまは小さくなったから入るんだよね。入れるものが紙からパソコンに変わったけど、ある意味用途は変わってないのが面白いなって。

確かに!

友理:
「トラベルウォレット」も、ほぼ同時期につくったものですね。旅行中に増える紙類をまとめられるものがあったらいいな、って思ったのがきっかけ。これ、私物のトラベルウォレットなんですけど……。
POSTALCO(マイク・エーブルソン&エーブルソン友理)インタビュー記事写真

すごい厚み。何が入ってるんですか?

友理:
いくつか持っていて。このトラベルウォレットは、母子手帳とか保険証とか診察券とか。家族が怪我した時とか緊急時にこれさえぱっと持って出ればいい、というセットなんです。こっちのトラベルウォレットには、家族全員のパスポートやマイレージカードなどを入れています。チェックインする時にここにまとまっていると、集中できるんですよ(笑)。ドルと円を分けて収納したりして。
マイク:
病院に行く時って基本的に嬉しくないじゃない? そういう時に温かみのあるものとか自分が好きなものを手にしていると、気分が変わるよね。

さすが自由に使いこなしていますね。友理さんの使い方、かなり参考になります。なんだか、欲しくなっちゃいますね(笑)。

マイク:
“これはこういう用途で使うもの”って決め込む必要はないから、自由に考えて自由に使ってもらえたらいいと思っています。
友理:
「使う人によっていろんな使い方がある」というのは目標にしているというか……使い方は自由、ということですね。

トラベルウォレットに限らず、ポスタルコの製品って使う人のために余白を残しているものが多いイメージがあります。同じく定番商品である「スナップパッド」もそうですよね。

友理:
この前子どもたちとマイクがスケートボードパークに出かけた時に、「子どもたちを待っている間に、本とか持っていかなくていいの?」って声を掛けたら「スナップパッドがあるから大丈夫」って(笑)。全部ここに入ってるんだ、って。
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何が入ってるんですか?

マイク:
僕の脳みそ(笑)。スケジュール関係もそうだし、やりたいこととか、気になることとか色々なメモが書いてあるんです。

ノートだと使い方のバリエーションもある程度想像がつくけれど、スナップパッドは使う人の用途に合わせてゼロからカスタムできて面白いですよね。以前、とあるレストランに行った時にスナップパッドに挟まれたメニューが出てきてびっくりしました。こういう使い方もあるんだ! って。

マイク:
実は、僕もその経験があります。すごく嬉しかったな。

“違和感”を感じるものがいい

連載「つくる人」では有形無形問わずさまざまなものをつくっている方に取材をさせていただいているのですが、まずはその方にとっての代表作や原点となるもの・ことについてお話を伺うことが多いんです。ポスタルコの原点は、すでに話に出た「リーガルエンベロープ」や「トラベルウォレット」ということになると思うのですが、「代表作は?」と聞かれたら、どの商品をあげますか?

マイク:
難しい質問ですね。どの商品も同じ気持ちで生み出してきたから「これ」ってことはなかなか言えないかな。一番好きな子どもは誰? って聞かれているような感じだよ(笑)。お兄ちゃんも好きだし、弟も好きだよって答えたいよね。

その都度、代表作が更新されている感じでしょうか?

マイク:
もちろん、すでにつくったものへの愛情も変わらずあるし、それをずっとつくり続けたいという気持ちもあるけれど……。商品を生み出す度に結構集中しないといけないから、頭の中がそのことでいっぱいになっちゃうんです。
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友理:
新しいものを生み出すためには、過去のことをどんどん忘れていかなきゃいけないんですよね。頭の中のスペースを空けるために(笑)。
マイク:
たとえば「フリーアームシャツ」をつくった時も「自分たちらしく、ポスタルコらしいシャツをつくればいい!」という気軽な感じじゃないんですよ。「世の中にどういうものが必要か」「自分たちだったら何がつくれるか」とか、そういうことで頭の中がいっぱいになっちゃうんです。そこを突き詰めきれないと、絶対に新しいものは生まれないから。

ポスタルコの商品って、どれもかなりのエネルギーと時間をかけて生み出させていますものね。

友理:
粘って粘って。
マイク:
あんまりおすすめできるやり方じゃないけどね(笑)。

それは、敢えてそういうスタイルをとっているのか、それともマイクさんの気質によるものなのか……どちらなんでしょう?

マイク:
常に全力でやる方法しか知らない感じかな。「もう少しこうすればよかった」と後悔した経験があるんです。でも、過去には戻れないでしょ?
友理:
遠くの方になんとなくゴールのようなものが見えていて、そこに行き着くまでは絶対に諦めないよね。
マイク:
何度も何度もプロトタイプをつくって、自分で使って検証して。大体、一度でうまく行くことはないからね。
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ゴールは、ある程度クリアーに見えてるんですか?

マイク:
気持ち的には見えている気がするんですけど、それをスケッチしてみたりかたちにしてみると、“なんか違うな”ということがほとんどなんです。想像していたものとマッチしないというか、想像していたものの方がもっと良かったってことがよくある。「あれ? 元々どんな気持ちだったんだっけ?」って、ぐるぐるして……。

なるほど。

マイク:
「これがいい」というところにたどり着くまでのプロセスがね、未だに自分でも理解しきれなくて。一旦は気持ちの赴くまま考え過ぎずに進めて、後で違う頭で俯瞰してみて「これは生産できないんじゃないか」とか「実際は使いにくいな」とか気がついてもう一回やり直したりね。

目にしたり触れたりすることができる「かたち」の奥底に、目には見えない沢山の層が積み重なっている……というのがポスタルコの商品の深さであり面白さだし、決して真似できない部分なんでしょうね。

友理:
これ以上考えられないくらい考え抜くから、いつか運が降りてくるようなプロセスなのかもしれません。そこをチャレンジとして楽しまないと。
マイク:
出来上がった時に満足感があるからね。ずっと苦しかったらやりたくないよ(笑)。時々、僕たちの仕事って農業みたいだなぁって思うことがあるんです。ある意味結構体力を使うし、タイミングや運がよくないとできないこともあるし。すごく大変だけど、満足感がある。ものづくりに限らず、満足感が大きいものって簡単じゃないことが多いんじゃないかな?

そういえば、ポスタルコの製品づくりの過程におけるお二人の役割分担はどうなっているのでしょうか。

友理:
主にマイクがデザインや構造を考えて、私はつくったものを「伝える」ことが主な役割ですね。どんな写真や動画で見せていこうかとか。ウェブサイトのデザインも自分たちで行っています。

マイクさんが悩んでいる時に、なにか意見やアドバイスを伝えたりすることもあるんですか?

友理:
そうですね。マイクは“ディティール”、つまり縫い目や機能とか細かい部分にグッと入っていくので、私は外から俯瞰してみて、ディスカッションになっていきます。
マイク:
ずっと集中して考えていると段々見えなくなってきちゃうから、そういう時に「こういう風にした方がいいんじゃないの?」って、全然違う視点で入って来てくれると助かるよね。もちろんディテールは大事だけど、そればっかりになってもいけないし。“引くこと”は大事だから。
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ご夫婦とはいえ違う人間ですし、共有していることもあれば全く異なった感覚もお持ちだろうと思うのですが、最終的には「なんともポスタルコ!」という空気を強烈に感じるものが出来上がるのが凄いなぁと思います。

マイク:
できるものに正解はないからね。最終的に「良い・悪い」の問題ではないというか。商品の色味にしても、この青がいいのか少し違う色がいいのか……正解はない。
友理:
でも不思議と、そういう感覚的な部分は意見が合うことが多いんです。「うん、この青だよね」って。違う国、違う環境で育ってきたけど……面白いものですよね。

ちなみに、悩みぬいた末の「これでGOだ!」という瞬間は結構はっきりしているものなんですか?

マイク:
そうですね。そうじゃなかったら製品化できないので。だいたい20個くらいは同時進行で商品化を進めていて、3/4は落ちる前提でいる感じかな。

やはり製品化するものとそうじゃないものの決定的な違いはあるのでしょうか。

友理:
サンプルを見た時に感じる“違和感”を、結構大切にしているかもしれません。いままでにないものをつくろうとしているから「これは売れるぞ!」という確信を感じるものだと、面白くないんですよね。違和感を感じるくらいがいいのかなって。
マイク:
そうだね。見た時に「売れる」と思うものって、たぶん世の中的にはすでに当たり前になっているものだと思うから、僕たちがつくる意味がないよね。
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後編へ続く


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CLASKA Gallery & Shop "DO" 各店にて、POSTALCO fair 2021 SSを開催します

equipment=道具としてのプロダクトとして、理知に富む魅力的なバッグやステーショナリーを展開している POSTALCO。店頭で人気のブリッジバッグやステーショナリーのほか、フェア限定で動きやすさの最大限を追求した新作のフリーアームシャツもご紹介いたします。
毎日使うごとにしっくりと馴染み、美しさが増すポスタルコのアイテムをこの機会にぜひご覧ください。

[会期]2021年2月18日(木)~3月14日(日) 10:30~19:00
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 京都店(藤井大丸 4F)
Instagram:@claska_do_kyoto

[会期]2021年3月18日(木)~31日(水) 10:00~21:00
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 札幌店(札幌ステラプレイス イースト 3F)
Instagram:@claska_do_sapporo

[会期]2021年4月7日(水)~16日(金) 10:00~21:00
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 名古屋店(タカシマヤ ゲートタワーモール 6F)
Instagram:@claska_do_nagoya

[会期]2021年4月21日(水)~5月5日(水祝) 10:00~20:00
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 二子玉川店(玉川髙島屋S·C 南館4F)
Instagram:@claska_do_futakotamagawa

[会期]2021年5月10日(月)~21日(金) 10:30~20:30
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 大阪店(ルクア イーレ 4F イセタン クローゼット)
Instagram:@claska_do_osaka

[会期]2021年5月28日(金)~6月10日(木) 10:00~21:00
[会場]CLASKA Gallery & Shop "DO" 仙台店(仙台パルコ2 2F)
Instagram:@claska_do_sendai

*営業時間は変更になる場合があります。詳しくは各商業施設のHPをご確認ください。

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2021/02/18

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