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21のバガテル モノを巡るちょっとしたお話

第7番:はじめてのおつかい
「エリック・ホグランのキャンドルスタンド」

文:大熊健郎(CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター) 写真:馬場わかな 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
大熊健郎 Takeo Okuma
1969年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、イデー、全日空機内誌『翼の王国』の編集者勤務を経て、2007年 CLASKA のリニューアルを手掛ける。同時に CLASKA Gallery & Shop “DO” をプロデュース。ディレクターとしてバイイングから企画運営全般に関わっている。

エリック・ホグラン(1932-1998)は50~70年代にかけてスウェーデンのガラスメーカーBODA社のデザイナーとして活躍した。このキャンドルスタンドもその時代の作品。

 はじめてスウェーデンに買付けに行ったのが2001年の夏。北欧の古い家具や雑貨を仕入れるのが目的だった。とはいえ当時は情報がない。インターネットはあったけどまだ成熟していなかったし、今でこそ無数にある北欧の家具や雑貨の店も当時の日本には数えるほどしかなかったと思う。

 旅のはじまりはスウェーデン最南部の町マルメ。日本から同行してくれたIさんのスウェーデン人の友人(おじいちゃんだったが)を水先案内人に車で出発した。おじいちゃんが調べてくれていたアンティーク家具ディーラーの元を2、3軒訪ねたのだが、あるのはオールドスタイルな田舎風の家具ばかり。どうやら水先案内人を間違えてしまった模様……。

 「こりゃだめだ」と半ば諦めかけていたとき、車窓からギャラリー風の家具屋らしき店が見えた。「ストーップ!」と声を上げて車を停め、店に入ると求めていた感じのヴィンテージ家具があるではないか。ウェグナーやモーエンセンの椅子やキャビネットが光り輝いて見えたものである。

 北欧のデザインマスターたちの家具やアノニマスだけど魅力的な家具が並ぶ店内に大興奮しながら品定めを終え、一息ついてソファーに座るとテーブルの上に丸いガラスの塊のようなものがあるのに気がついた。手に取ってよく見ると真ん中が窪んでいて牛のようなレリーフがある。

 店主にこれは何かと尋ねると、スウェーデンのアーティストがデザインした灰皿で50年代のものだという。ぽってりと肉厚なガラスの灰皿は、シンプルで洗練されたいわゆる北欧デザインのイメージと違い、どこか原始美術のような迫力があった。それがエリック・ホグランとの最初の出会いだった。

 すっかりホグランに魅了された僕は、家具そっちのけでホグラン探しをはじめることにした。車でスウェーデンを横断しながら目に付いたアンティーク店やスリフトショップに片っ端から入ってはホグランらしきものを探して購入。今思えばだいぶ偽物もつかまされたのだが……。

 初の北欧買付けの収穫に一人満足して帰路についたものの、「個人的な思いが先走って大量に買付けてしまったが大丈夫なのか」という不安が急に襲ってきた。これはなんとしても売らねばならない。ホグランの魅力を伝えようと自費で小さな冊子をつくり、展示会を開催すると予想以上に大勢の人に気に入ってもらえたのが本当に嬉しかった。「思い」の熱量が強いと伝わるものである。

 ちなみにエリック・ホグランという日本語読みは僕が勝手に決めた。「勝手に」というのは現地だとHoglundは「ヘィグルンド」とか「へグルンド」という発音が本当は近い。でもローマ字読み風の「ホグラン」の方が親しみやすいし覚えやすいと思ったから。だってマイコー・ジャクソンのことも日本じゃみんな「マイケル」って呼ぶでしょう。

ホグランは数多くのボトルやデカンタをデザインしている。厚く歪みのあるガラスならではのマッシブな存在感と温かみ。ガラスは薄ければいいってもんじゃない。

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2020/05/21

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