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21のバガテル モノを巡るちょっとしたお話

第4番:小さなコレクション
「佐野繁次郎によるパピリオ化粧品のパッケージ」

文:大熊健郎(CLASKA Gallery & Shop "DO" ディレクター) 写真:馬場わかな 編集:落合真林子(OIL MAGAZINE / CLASKA)

Profile
大熊健郎 Takeo Okuma
1969年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、イデー、全日空機内誌『翼の王国』の編集者勤務を経て、2007年 CLASKA のリニューアルを手掛ける。同時に CLASKA Gallery & Shop “DO” をプロデュース。ディレクターとしてバイイングから企画運営全般に関わっている。

 えーと、ハンバーグにオムライス、ビーフシチューでしょう、あとナポリタン、あーそうそうメンチカツ、メンチだけは絶対外せないなあ。なんて書いているだけでなんだかお腹が空いてくる。洋食って美味しいなあ、好きだなあとしみじみ思う。洋食の何がいいって、白いごはんに合うところ。大のごはん党の僕にとってそれは極めて重要なこと、なのである。

 ところで、僕はここで洋食と白いごはんの親和性がいかに素晴らしいかを説こうというわけではない。「洋食の美」、いや「洋食のオリジナリティ」というようなものについて語りたいのだ。つまり元々他国にその起源をもつ文物を日本的なものに変容させ、立派にオリジナルといえるものにまで昇華させる日本人の技、とでも言いましょうか。宗教、言語、芸術、科学技術などなど、あらゆる文化領域でその技はいかんなく発揮されてきたではないか(単なるパクリも多いですけどね……)。

 写真はある化粧品メーカーの古いパッケージの一部。どうです? なかなか洒落ているでしょう? デザインといい、色使いといい、はじめて見る人は海外の商品かと思った人もいるのではないかな。でもこれ、れっきとした日本人の手によって戦前にデザインされたもの。

 デザインを手がけた佐野繁次郎は1900年(明治33年)に大阪で生まれ、数多くの本の装丁やパッケージデザインも手がけたことでも知られている洋画家である。佐伯祐三を知己にもち、佐野自身も二度に渡って渡仏し、なんとアンリ・マティスに師事していたこともあるという。と聞けば「なるほど」とうなづく人もいるかもしれない。

 マティス譲りともいえる色使いも秀逸なのだが、「サノシゲデザイン」をより独創的なものにしているのは何と言ってもその手書き文字の使い方。特に本の装丁の仕事にその卓越した感覚がいかんなく発揮されている。日本語にしてもアルファベットにしても実に味わいある文字を描き、また絶妙なレイアウト(間の取り方)をして、一見ラフな手書きの文字を実に洗練されたデザインに料理してしまうんですね。まさに一流の洋食、とでも言いたくなるデザイン。

 パピリオ化粧品は伊藤胡蝶園という明治時代に創業した日本創世記の化粧品会社が戦後改名して生まれたブランド(パピリオって蝶ですもんね)。実は戦後になって佐野自身がこの会社の重役も務めている。今でいうアートディレクターとして敏腕をふるっていたのでしょう。

 古道具屋さんで見つけては買ったり、僕がこのシリーズを好きなことを知っている友人が、骨董市などで見つけると買っておいてくれたりして、コツコツ集めたもの。モノは多いけど系統だった物集めの習慣がない僕にとっては、唯一といっていいコレクションかもしれない。

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2020/04/12

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